「口臭外来から分かるその人の生活と未来」 ~「現在の生活習慣が未来の自分の体を作る」ということを理解していますか? 人間の体は自分が食べたもので成り立っているということをもっと真剣に考えましょう~
1日目
朝:菓子パン、コーヒー牛乳
昼:クッキー、いちごミルク
夜:ハンバーガー、ナゲット、コーヒー
2日目
朝:菓子パン、コーヒー牛乳
昼:チーズバーガー、メロンソーダ、ポテト
夜:たこ焼き、ポテト、ドーナツ
3日目
朝:ドーナツ、コーヒー牛乳
昼:冷やし中華、カルピス
夜:冷やし中華、エビチリ、麦茶
4日目
朝:パン、牛乳
昼:クッキー、桃ジュース
夜:プルコギ、エビチリ、ご飯、卵焼き
5日目
朝:パン、コーヒー牛乳
昼:クッキー、桃ジュース
夜:ステーキ、ご飯、みそ汁(えのき、卵)
6日目
朝:黒糖パン、コーヒー牛乳
昼:いちごミルク、チョコレート
夜:ホタテの刺身、エビチリ、ご飯、みそ汁(えのき、卵)、チーズちくわ
7日目
朝:ピーナツパン、コーヒー牛乳
昼:コンビニ弁当、麦茶、抹茶オーレ
夜:そぼろ丼、ミートボール、チーズちくわ、麦茶
これは、令和3年に大澤歯科医院の「口臭外来」を受診した、家族(両親、兄弟)と同居している20代前半の女性会社員(Aさん)の一週間の食生活の記録です。(口臭外来では、受診1週間前の食生活習慣を記録してもらいます。)
この食生活の記録を見て、皆さんはどのように思われますか?「あり得ない食生活だ」「これは食事ではなくおやつだ」「体を壊しそう」などと思う方がほとんどでしょう。栄養学的に見ても、成人女性に必要な栄養素が全く摂取できていません。
「口臭」はいろいろな原因が複雑に絡み合っているのですが、口臭外来を受診する患者さんの中には、このような食生活習慣をする方が多く、Aさんが決して珍しいわけではありません。
柔らかい物ばかり食べるので「噛む」と顎が疲れる。水分で食べ物を流し込まなければ食事が出来ないので、食事の時に必ず飲み物を用意する、といった特徴的な食生活習慣があります。噛む回数が極端に少ない(噛まなくてもいいものばかり食べている)ので、唾液が出なくなる、あるいは唾液の量が少なくなるため、ドライマウスになり口臭の直接の原因にもなっています。
また、食事で十分な栄養を摂取できないので、元気がなく、体力が低下して、動くことが億劫になるので引きこもりがちになる。さらに、もともと口臭が気になり、他人と会話したり接触したりすることを避けているうえに、食生活の乱れが自律神経をも乱してしまうため、鬱(うつ)傾向が顕著になり、抗うつ剤などを服用するようになるケースもあります。
Aさんの場合、もしこの先、妊娠、出産を望んだ時に果たして望み通りの妊娠、出産を迎えることが出来るでしょうか?
不妊の原因も様々なので、断定はできませんが、見た目は標準的な体形でも、このような食生活習慣を続けていたのでは、栄養失調になり、妊娠する可能性が低くなることが考えられます。
また妊娠したとしても無事に出産できるかどうか?また、出産できたとしても体力と気力が必要になる「子育て」というハードな道を歩き続けることができるかどうか?
仮に、Aさんが母親になった時に、子供にどのような食事をさせるのか?と考えると余計なお世話なのかもしれませんが、心配になってしまいます。
Aさんの母親は40代で、家族全員がこのような食生活をしているそうです。もしかするとAさんの母親も、自分の母親(Aさんの祖母)から正しい食生活習慣を教えられることがないまま母親になり、自分の子供であるAさんに自分が体験してきた食生活習慣を伝えてしまったのかもしれません。
Aさんも、Aさんの母親もまだ若いので、体力で乗り越えられることもあるでしょうが、人は誰でも歳をとり、体力は衰えていきます。10年後、20年後、Aさん家族はどのような生活を送っているでしょうか。
残念ながら、健康で生き生きとした家族像を想像することは難しいような気がします。不慮の事故や遺伝的な疾患を除き、病気になる原因の多くは「食生活習慣」です。今まで食べてきたものが、そして今日食べたものが、あなたの体を作っています。
将来、病気になってから「こんなことになるのならもっと健康に気をつければよかった」と後悔するぐらいなら、今、出来ることから改善してみてはいかがでしょうか。
口臭外来を通して、患者さんの食生活習慣の乱れを感じるとともに、若い患者さんの将来の健康を心配せずにはいられません。もしかするとこのような食生活習慣をしている日本人は、増えているのかもしれません。
自分がいつ、どんな物を食べたのか?一度、書き出してみましょう。未来の自分の姿が見えてくかもしれません。
食生活習慣を見直して、変えることができるのは自分だけなのですから。
コラムニスト:大澤優子
株式会社ケロル 代表取締役
歯科医師
八戸市出身。岩手医科大学歯学部卒業後10年の勤務医生活を経験し、その後大澤歯科医院副院長となり現在に至る。
医院とスタッフのマネジメント、子育てで悩んでいた40代で個性心理學と出会い、個性心理學認定講師として一部上場企業、歯科デーラー、小児科医院などでの講演を多数行っている。
青森市大澤歯科医院「ママさん歯科医師Dr. YUKO」のブログで女性歯科医師としての目線で、日々の診療、働く女性として、子育てのことなどを発信中。
●青森市大澤歯科医院「ママさん歯科医師Dr. YUKO」のブログ
https://ameblo.jp/dr-yuko0610/