「予防歯科大国、北欧旅行で感じたこと①」~歯科治療と医療廃棄物~
2023年の12月、デンマークの首都であるコペンハーゲンに10泊しての北欧を旅してきました。北欧諸国は社会保障制度が充実した「高福祉国家」として有名ですが、実は「予防歯科大国」としても有名です。
日本でも北欧の予防歯科システムを取り入れて歯科医療費の削減し、最終的には膨れ上がっている医療費の削減にもつなげようとしていますが、あまりうまく進んでいないのが現状です。
今回初めて北欧を訪れるまでは、教育、医療、年金、介護、失業保険とあらゆる社会保障が充実していて、なんて羨ましい国だろうと思っていました。
しかし、高福祉国家を維持するためには国民が負担している税率の高さに驚きました。所得税55%、消費税25%、自動車取得税は280%。(300万円の車を買ったとしたら税金が840万円必要になります)
自動車取得税が高額すぎるので多くの国民は移動に自転車を使用します。そのため公道には自転車専用のレーンが設置されていて、地下鉄や電車にも自転車を持ち込むことが可能です。
朝の通勤ラッシュ時はすごい数の自転車が爆走していて、あのスピードでもし事故にあったら大怪我をするのではないかと心配になりました。
こんなにも税率が高いのであれば国民から不満が出そうですが、デンマーク人の多くは、収めた税金は社会保障のサービスとして自分たちに返ってくるので、税金が高すぎると思っていないというのが現実のようです。
限りある資源を有効に使うためにリサイクルもシステム化されていて、スーパーの店内にペットボトルのリサイクルコーナーがあり、ペットボトルをリサイクルするとその場で現金に換えることができます。
日本からコペンハーゲンまでは直行便がないため、ヘルシンキヴァンター空港で乗り換えましたが、空港内のごみ箱は一カ所になんと6種類ものボックスが置かれていました。ペットボトル、紙ごみ、プラスチックごみ、生ごみなどに細分化されていました。
ウォルトディズニーが訪れて、ディズニーランドのモデルにもなっているコペンハーゲン市内の代表的な観光地である「チボリ公園」。園内で飲み物をテイクアウトするとプラスチックのコップに入れてくれるのですが、飲み終わった後にリサイクルのための自動販売機のような機械にコップを戻すと、リサイクル代金として現金が戻ってきます。
国民全体が、使い捨てではなく、使えるものはリサイクルして徹底的に使いまわし、ゴミの量を減らすことによって使う税金を少なくする努力をするのが当たり前の社会構造になっていると感じました。
現在は歯科医院のほとんどが患者さんのうがい用のコップは紙コップを使用していますが、昔はうがい用のコップは金属製で、洗って消毒して使っていました。またエプロンも使い捨て製品を使っている歯科医院がほとんどですが、以前は布性のエプロンを洗濯して使っていました。
実は歯科治療は環境には優しくありません。スタッフ全員が患者さんごとに新しいものに換えるグローブの廃棄量は莫大な量です。歯を削る時に発生する熱を冷やしたり、削りかすを流すためにタービンという機械から水を出しながら歯を削りますが、削る時に出た水はバキュームという掃除機のような器具で吸ってから廃棄します。
また、粘土のようなもの(印象材)で歯型をとり、石膏を流して患者さん各々の模型を作りますが、1本の被せものを作る場合でも口の中全体の歯型が必要になります。これらのゴミは「医療廃棄物」といって一般のゴミと一緒に捨てることはできないので、専門の業者さんに処分をお願いしています。
これらの消耗品購入代金や医療廃棄物処理代金は歯科医院が負担していますが、近年の社会情勢や物価高で多くの費用がかかっています。
現在、日本ではゴミ処理の費用として国民一人当たり年間で15000円ぐらい負担しているそうです。
ゴミを減らす、なるべくゴミを出さないようにすることが、環境にもお財布にも優しい生活に繋がります。環境に優しくない歯科治療の頻度をなるべく減らすために「治療」から「予防」へシフトしていきたいものです。
コラムニスト:大澤優子
株式会社ケロル 代表取締役
歯科医師
八戸市出身。岩手医科大学歯学部卒業後10年の勤務医生活を経験し、その後大澤歯科医院副院長となり現在に至る。
医院とスタッフのマネジメント、子育てで悩んでいた40代で個性心理學と出会い、個性心理學認定講師として一部上場企業、歯科デーラー、小児科医院などでの講演を多数行っている。
青森市大澤歯科医院「ママさん歯科医師Dr. YUKO」のブログで女性歯科医師としての目線で、日々の診療、働く女性として、子育てのことなどを発信中。
●青森市大澤歯科医院「ママさん歯科医師Dr. YUKO」のブログ
https://ameblo.jp/dr-yuko0610/