「透析技術認定士による透析の基礎の基礎」(10)~認知症透析について
こんにちは、看護師の中野です。
梅雨のシーズンになってきましたが、皆さまいかがお過ごしでしょうか?
今回のテーマは「認知症透析について」です。
一緒に学んでいきましょう
認知症とは
加齢とともに切り離すことができないのが認知症です
認知症の最大の原因が加齢であり認知症は誰にでも起こりうる身近な病気です
実は認知症は病名ではなく症候群です
種類としてアルツハイマー型認知症、脳血管性認知症、レビー小体型認知症などがあります。
2025年 高齢者5人に1人が認知症の時代へ
「日本における認知症の高齢者人口の将来推計に関する研究」の推計では2020年の65歳以上の高齢者の認知症有病率は16.7%約602万人になっており、6人に1人程度が認知症有病者になっています。
2025年には5人に1人が認知症有病者の時代に突入し増加傾向と予測されています。
世界規模では毎年1000万人近くが新たに認知症となるとの報告もあり、WHO(世界保健機関)によると2015年、認知症有病者数は5000万人これを365日、1日、1時間、と細かく割っていくと、約3秒に1人が世界のどこかで新たに認知症になっている計算になります。
平成30年度と古いデータではありますが、青森県青森市では認知症患者数約1万人、八戸市でも約1万人とのデータがあり年々増加傾向にあります
認知症患者の透析風景
認知症の透析患者様の透析中の注意点は、ズバリ自己抜針です。透析中、針が入っているので急な体動は危険なのですが、ご本人に説明しても理解ができないのです。「腕に何かついている」とチューブを抜いてしまったり、自由に腕を動かして、針とチューブの接続部が緩んで出血していたり、危険なことを少しはわかっているのにわざと抜いてしまう等の危険が予測されます。
透析開始する前に、自己抜針がないようにシーネ固定をして透析を開始します。透析中は出来るだけ目を離さないように対応したり、患者様の気持ちが落ち着くように訴えを聞いたりと対応します
4時間という透析時間を過ごす間に活動が始まる場合があります。その場合はぬりえをしたり、歌を歌ったり、本を読んだりと好きな事は夢中になり穏やかに透析治療を受けることができます。ご本人に「きれいにぬりえ塗っているね」「歌が上手だね」とか話すとにっこり笑顔で「ありがとう」と穏やかな気持ちで透析治療を行っています。
家族の負担と患者様の透析拒否も問題
家族の負担が増えること・透析患者様自身も認知症などの合併症を患いながら透析治療を受けることを負担・外レスに感じることで、患者様自身が透析治療を受けることを拒否してしまうことがよくあります。
「家族に迷惑をかけてしまう」「もう透析治療を受けたくない」という患者様の気持ちが透析治療への前向きな気持ちを失ってしまうことが珍しくありません。
患者様・ご家族に最後まで透析治療を受けよう・しっかり看取ってあげようという前向きな気持ちがなくなってしまうと、ますます透析治療と介護が苦しいものとなってしまいます。また、認知症やほか合併症の悪化・寝たきりといったさらなる悪化を招くという負のサイクルに陥ってしまう心配もあります。
新しい透析環境「介護透析」
全国に広まるには時間がかかると思いますが認知症を中心とした高齢者の合併症と透析治療への新たな考え方として確率されつつあるのが、「介護透析」です。
透析患者様の高齢化が進むなかで、医療・介護が別々の括りではなく一体となった老人ホームや介護施設が全国に増えつつあります。
認知症を患っている患者様の場合、透析クリニックへの送迎・見守りといった家族の負担や、トラブルを起こすかもしれないといったストレスが「介護透析」によって大幅に解消されると期待されています
まとめ
今後ますます増えると考えられている高齢者の透析患者様。認知症や介護といった高齢者特有の問題と同時に、透析治療の受け方・家族の負担・患者様自身の生き方といったさまざまな事柄を複合的に考えてクリニックや施設を選ぶ必要があると思います。
透析治療を受ける約10%程度の方に認知症の症状がみられるという統計もあり、高齢者の透析治療にとって介護の重要性がますます高まってきます。
介護と専門医療が一体となって家族・患者様の負担を減らすことが、今後の地域医療のひとつの土台になればよいと思っています