長寿と健康寿命と歯の話② ~何気ない食生活習慣が生活習慣病そして認知症につながっているとしたら~
高齢者が一番なりたくない病気は「認知症」だそうです。
自分で自分のことがわからなくなったり、大切な人の事を忘れてしまうのはとても悲しいことです。最悪、認知症になった本人は記憶がなくなってしまいますが、認知症患者を抱える家族の苦労は計り知れません。
年を重ねることによって認知症の発生率が高まるので、年をとらないようにすれば認知症も防げるということになります。しかし、残念ながら人の一生の中で、今この瞬間が一番若く、生まれた瞬間から「死」に向かっています。
出来る限り「老化」を予防すれば認知症のリスクが少なくなるということが解明されつつあります。
「老化の予防」と聞いて、皆さんはどのようなことを思い浮かべますか?
ウォーキングして足腰を弱らせないようにする、筋トレして強い体を作る、健康食品を摂取する、いつも笑顔で過ごすようにする、ストレスをためないようにする、脳トレをする、趣味の時間を大切にするなど人それぞれでしょう。
食べ過ぎに注意する、肥満にならないように気をつける、食品添加物を避けるなど食事に気を付けている方も多い事でしょう。
認知症専門医によると生活習慣病(糖尿病)の有病率が認知症の有病率に影響し、糖尿病患者のほうが健康な人より認知症になる確率も高くなるそうです。
糖尿病が生活習慣病の代表的な病気であることは広く知られています。糖尿病には色々なタイプがありますが、2型糖尿病の場合、内科医から食事について指導されることも多いでしょう(食事療法)。
糖尿病の患者さんの中には甘いものの取りすぎやアルコールの飲みすぎで病状が悪化してしまう人も存在します。しかし、甘いものの取りすぎやアルコールの飲みすぎの患者さんの場合、食事療法を指導されても上手くいかないことがあります。
甘いものを取りすぎる人の口の中はむし歯だらけです。むし歯が小さいうちに治療すれば治療期間も治療費も少なくて済みますが、痛くて眠れない、化膿して顔が腫れたなどかなり重症になってから受診される方も存在します。
また、アルコールを飲み過ぎる人の場合、酔っ払ってしまい歯磨きをしないで寝てしまうということを繰り返します。口腔内の細菌は夜寝ている間に増加するので歯周病が悪化します。
「歯」の状態が良ければどんなものでも食べられますが、むし歯で穴があいているため食べ物が入ると痛い、歯周病で歯がグラグラしているので軟らかい物しか食べられないなど「歯」の不調が原因で食生活習慣が乱れてしまい、さらに全身状態を悪化させる、という負の連鎖が永遠に続くことになります。
何気ない食生活習慣が将来、糖尿病そして認知症に関係してくるなんて若いうちは考えることなどありません。
「人生最後の10年間を寝たきりで過ごす」と言われる日本人ですが、今からそしてできることから「老化の予防」を始めて認知症や寝たきりで過ごす時間を短く過ごしたいものです。そのための第一歩としてまずはご自身の食生活習慣を見直してみてはいかがでしょうか。
コラムニスト:大澤優子
株式会社ケロル 代表取締役
歯科医師
八戸市出身。岩手医科大学歯学部卒業後10年の勤務医生活を経験し、その後大澤歯科医院副院長となり現在に至る。
医院とスタッフのマネジメント、子育てで悩んでいた40代で個性心理學と出会い、個性心理學認定講師として一部上場企業、歯科デーラー、小児科医院などでの講演を多数行っている。
青森市大澤歯科医院「ママさん歯科医師Dr. YUKO」のブログで女性歯科医師としての目線で、日々の診療、働く女性として、子育てのことなどを発信中。
●青森市大澤歯科医院「ママさん歯科医師Dr. YUKO」のブログ
https://ameblo.jp/dr-yuko0610/