長寿と健康寿命と歯の話① ~毎日の歯のお手入れ(セルフケア)こそが「健康寿命」を延ばします~
「いつまでもあると思うな親と金」。
親はいつまでも面倒を見てくれるわけではないし、順番通りに物事が進むと自分より先にあの世に行ってしまいます。またお金も使うだけだといずれ無くなってしまいます。
いつまでも誰かに頼ってばかりではなく自立することと質素倹約を心掛けることの大切さを表現している言葉です。
人生において、親やお金は大切にしなければならないものですが、「健康」も無くしてからその重要さに気が付き、後悔することのひとつでしょう。
「健康」な体を作り、維持していくためには毎日の食事が必要です。自分が口にしたものから自分自身の体が作られていくのですが、若いうちは「無理」が効くので暴飲暴食を繰り返したり、体のメンテナンスをサボっていたと、という方も多いかもしれません。
自分の体を作るためには口から食事をしますが、体調が悪い時や病気になった時には口から栄養を取ることができなくなるため、点滴で生きていくための最低限の栄養を補給します。私達歯科医師が対象とする「歯や口」は健康に生きていくためにはなくてはならない体の一部分です。
日本人の寿命は世界でもトップクラスであるということは皆さんもご存知でしょうが、死ぬまでに「寝たきり」の状態で過ごす期間が長いのも世界でトップクラスであるということはあまり知られていません。寿命は長いけれど、歩けなくなり、オムツのお世話になり、寝たきりでベッドの上で過ごす時間が長いというのが日本人の特徴です。
介護や支援が必要になってから亡くなるまでの期間は男性で9年間、女性で12年間と言われています。12年あれば干支が一周、生れたばかりのお子さんは小学校を卒業します。「平均寿命は長い」けれど、「健康寿命は短い」ので医療費も毎年右肩上がりです。
加齢とともに人の体には何かしらの不調が現れ、不調と共に死に向かっていきますが、不調が現れる時期は遅い方がいいし、不調と付き合う期間は短い方がいいに決まっています。
「健康」を失ってから後悔しないためには、自分の体が作られる元になる食事そのものと食事をするために必要な体の一部分である「歯と口」を大切にしていきたいものです。
では「歯と口」を大切にするためには、具体的にどんなことをしたらいいでしょうか?
もちろんむし歯や歯周病になっている場合は早めに治療することも必要ですし、定期的な歯科医院でのメンテナンスも重要です。
しかし、一番重要なのは毎日の歯のお手入れ(セルフケア)です。
1日3回、1回の歯磨き時間が3分の人は【3回×3分×365日=3285分】となり、一年間で3285分のセルフケアを行っています。この方が仮に一年間に3回、歯科医院で60分間、プロによるプロケアを受けたとしたら【3回×60分=180分】となります。
【3285分と180分】、いかにセルフケアが重要かを物語っている数字です。
なんとなく、あるいは適当なセルフケアではなく、自分の歯と口の中にあった正しいケア用品を使うことによって、セルフケアの精度を上げることこそが、「健康寿命」を延ばし、人生の終末期における寝たきりの期間を短くすることに繋がります。
冒頭の「いつまでもあると思うな親と金」の後には「いつまでもないと思うな運と災難」と続くそうです。先人の知恵がつまった言葉ですね。誰もが人生の中で今日が一番若い日です。
「いつまでもあると思うな若さと健康」という言葉を忘れずに毎日を大切に過ごしていきたいものです。
コラムニスト:大澤優子
株式会社ケロル 代表取締役
歯科医師
八戸市出身。岩手医科大学歯学部卒業後10年の勤務医生活を経験し、その後大澤歯科医院副院長となり現在に至る。
医院とスタッフのマネジメント、子育てで悩んでいた40代で個性心理學と出会い、個性心理學認定講師として一部上場企業、歯科デーラー、小児科医院などでの講演を多数行っている。
青森市大澤歯科医院「ママさん歯科医師Dr. YUKO」のブログで女性歯科医師としての目線で、日々の診療、働く女性として、子育てのことなどを発信中。
●青森市大澤歯科医院「ママさん歯科医師Dr. YUKO」のブログ
https://ameblo.jp/dr-yuko0610/