「予防歯科大国、北欧旅行で感じたこと②」~習慣を変えて健康を手に入れる~
先進国の中では「歯が汚い、歯並び悪い、口臭がする」と言われ続けている日本人。「予防歯科大国」として知られている北欧との違いは一体何でしょうか?
今回は日本人に予防歯科が浸透しない理由を考えてみたいと思います。
昨年末の北欧旅行中、デンマーク王立病院に肝臓外科医として勤務しているF先生、日本から留学している外科医のH先生、小児科医であるH先生の奥様とお話をする機会がありました。
日本の医療は「フリーアクセス」と言って、ほとんどの場合、患者さんは自分で行きたい病院へ行くことが可能です。たとえ夜中であっても救急車を呼んで医療機関を受診できます。しかし、デンマークではこのフリーアクセスが制限されています。国民それぞれに「がかかりつけ医」が割り当てられており、IDカードにはかかりつけ医のオフィスの電話番号が記載されています。もし体調が悪くなった場合、自分の「かかりつけ医」以外は受診できない決まりになっています。
さらに受診は予約制で、もし予約がない場合は8時間以上待たされることもあるそうです。
では、もし熱が出て具合が悪くなったらどうするか?
薬局から解熱剤を買ってきてその薬を飲み、数日間自宅で安静にするそうです。受診は予約制のため仮にこのタイミングでかかりつけクリニックに予約の電話をしたとしても予約がとれるのは数日後。
数日後、受診した時にはすでに体調が回復している、あるいはドクターからは薬を処方されることもなく、自宅で安静にするように言われるだけのこともあります。もしかかりつけ医が重症だと判断した場合はかかりつけ医から専門医に紹介するというシステムになっています。
ケースにもよりますが、ちょっと熱っぽいとか体調が悪い時は美味しい物を食べて早く寝て、安静にしていたら回復した、ということを経験したことがあるという人も多いのではないでしょうか。
病院と薬が大好きな日本人には、受診したのに投薬されなかったなどということは考えられないでしょう。もしかすると「あの先生はちゃんと診察してくれなかったから訴えてやる」という事態に発展する可能性もあります。
フリーアクセスが制限されているため「自分の健康は自分で守るための生活習慣」が浸透しています。
そのひとつが「予防歯科」です。「予防歯科」を健康の国家戦略と位置付けて、18歳までの歯科治療は無料となっています。歯科治療費が無料だからと言ってデンマークの子どもたちは治療を受けるために歯科医院に通っているかというとそんなことはなく、むし歯にならないように「予防」のために歯科医院で定期的な健診とクリーニングを受けているのです。
国が違っても日本の子どもたちと同様にお菓子やアイス、ケーキが大好きです。観光の途中に立ち寄ったコペンハーゲン市内のスーパーにもお菓子コーナーの棚があり、色とりどりのお菓子が並べられていました。
デンマーク以外の北欧の国々でも制度の違いはあるものの、歯科医院は治療に行くところではなく、健康な歯を守るための「予防」に行く場所なのです。
歯科医院に行って健診を受けてクリーニングをする、という習慣を身に付けることによって健康を手に入れているのです。
日本人の平均寿命は伸びていますが、健康なまま生き生きと過ごしている高齢者は少数で、亡くなるまでの10年間は寝たきりや要介護状態になっています。人生100年時代と言われていますが、仮に10年間寝たきり、あるいは要介護になったら人生の十分の一はベッドや車いすの上で過ごすことになります。
日本での予防歯科受診率は数パーセントですが、北欧での予防歯科受診率は9割に達しています。
この予防歯科への意識の違いと実際に行動に移して歯科医院を受診するかどうかが、将来10年にも及ぶ寝たきり生活の生活になるか、それとも人生の終わりの時まで生き生きと満ち足りた時間を過ごすかどうかの違いになってくるのです。
どちらの人生を選ぶか?選択権はあなたにあります。
「予防歯科」という習慣を身に付けて、将来健康を失ってから後悔することがないようにしたいものです。
コラムニスト:大澤優子
株式会社ケロル 代表取締役
歯科医師
八戸市出身。岩手医科大学歯学部卒業後10年の勤務医生活を経験し、その後大澤歯科医院副院長となり現在に至る。
医院とスタッフのマネジメント、子育てで悩んでいた40代で個性心理學と出会い、個性心理學認定講師として一部上場企業、歯科デーラー、小児科医院などでの講演を多数行っている。
青森市大澤歯科医院「ママさん歯科医師Dr. YUKO」のブログで女性歯科医師としての目線で、日々の診療、働く女性として、子育てのことなどを発信中。
●青森市大澤歯科医院「ママさん歯科医師Dr. YUKO」のブログ
https://ameblo.jp/dr-yuko0610/