ヒト・コト(人事)日記⑥~新人が1年未満で転職するリスク~

最終更新日:2021年12月8日

皆さま、こんにちは。

新型コロナウイルス感染拡大で、「例年どおり」ということが全くなかった2020年度だったことと思います。

 

新入職員の皆さんも、いきなり徹底した感染対策と日々、感染するかもしれないという恐怖と向き合いながらようやく1年目を終える時期を迎えようとしています。しかしながら、コロナ禍から先輩たちですら厳しい状況の医療の現場を離れる方々も出てきていることは報道などから耳にしていることと思います。

 

現状の辛さから、「辞めたい」と思った新入職員の皆さんに1つだけ知識としてお伝えしたいことがあります。

 

経験のある先輩方の離職と新入職員である1年未満の職員の離職は、他者からの受け止め方が全く異なります。

 

経験のある先輩方の離職は、

 ☑ 人間関係で何かあったのかも・・・

 ☑ 給与面等の処遇に不満があったのかな・・・

 ☑ 仕事ができる人だったからうちの病院では物足りなかったかな・・・

などのように、様々な経験からの理由での離職であることで捉えられます。その経験とは、医療という専門職としての経験だけではなく、それに必要な知識や技術という「腕(うで)」です。

しかし、新入職員の1年未満の離職は、どうでしょうか。

 

経験のある先輩と同様に、人間関係、処遇面、もっとスキルアップしたいという動機で1年未満に離職すると、次の就職先に応募するとき人事担当者はこう見ていることが多いのです。

 ☑ 「1年も経たないのに何で辞めたんだろう・・・」

  ・・・というようによくない意味で関心を持っての面接をされます。

 ☑ 「1年すらもたないんだから、うちで採用しても同じかもね・・・」

  ・・・というように採用の可否のときのハードルが高くなってしまいます。

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また、転職は「履歴書に残る」ということも忘れてはいけません。

 

例えば、たった1ヶ月でも正職員として就職したのであれば、今後一生履歴書に記載しなければならないのです。

 

「1ヶ月ぐらいだからいっか」とか「1年ぐらいいっか」と省いてしまうと、履歴詐称になります。また、1年で離職するということは、積極的理由ではなく、消極的理由の方が多いと思います。そうすると、自分自身の経歴から消してしまいたいという気持ちもあり、履歴書に記載しなくてもいいという自己判断をしてしまう人も実際にいます。

 

だからこそ、離職するときは、今の離職が生涯労働としてどのように影響するのだろうということを今一度考ていただきたいなと思うのです。

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さらに言うと、一度転職すると、転職するハードルが下がります。少しでも職場で嫌なことがあると転職を繰り返すようになります。

 

医療の専門職は、慢性的人手不足の折、引く手あまたです。採用試験も簡単な面接ですぐに採用を決める医療機関が多くなっています。このような採用環境から、

 「採用されやすい」=「嫌なことがあるとすぐ転職」

になっていることも事実として認識しておくことも必要です。

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そこで、離職を考えたときに振り返っていただきたいことがあります。

 

 ☑ この病院に確実に身についたことは何か

 ☑ 次の職場に行くとき、自信を持って「これが得意」「これなら負けない」ということは何か

 

です。

 

次の職場にしたい医療機関の採用面接で、この2つを自信をもって答えることができるかです。それが答えられないのであれば、この2つを答えられるまで頑張ってみませんか。

 

ただ、1年目の新入職員の皆さんにはそれを考えるには正直なところ限界があります。

 

職場で嫌なことがあったり、自信を無くしてしまったり、友達の病院の方が楽しそうだなと思ってしまったりしたら、まずは話を聴いてもらいたい先輩(職場内、職場外どちらも)に話してみることだと思います。

 

大切なのは、一人で考え込まない、一人で決断しないことです。

 

1年目は、まだまだ多角的な視点が備わっていません。こういうことこそ、信頼できる先輩、家族に話してみることは大事だと思います。

 

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執筆者
下田 静香

下田 静香

代表取締役社長

経営学修士(MBA)
法政大学大学院イノベーションマネジメント研究科卒

青森県八戸市鮫町出身。1969年生まれ。
青森県立八戸北高校、群馬県立女子大学を卒業後、専門学校、大学、財団法人、社会福祉法人の事務部門を経験。その後、病院、介護施設の人事制度構築コンサルタントとして活動。40歳のとき、人事の専門家としての“道”を再構築するため、経営大学院に入学。病院における人材・組織開発、多職種連携を研究。

現在は、医療分野、福祉分野(介護、保育、障害)の人事制度構築、人材育成プログラム開発、人材育成に関する階層別研修、組織開発研修や講演、執筆等、人事組織アドバイザー、研修講師として活動中。クライアントの要望に添った丁寧なコンサルティング、すぐに使える(活かせる)研修プログラムと講義を大切にしており、人事制度構築では、全国の病院、介護施設で実績を積み、それに付随する評価者研修講師は延べ500件以上を手がけている。

著書に「介護施設のためのキャリアパスのつくり方、動かし方」(東京都社会福祉協議会)、「理学療法士育成OJTテキスト」(文光堂 共著)、「医療人材・組織の育成法」(経営書院 共著)