ヒト・コト(人事)日記⑩〜”頑張れる感”のつくり方~

最終更新日:2021年12月19日

2021年も残り少なくなりました。

新型コロナウィルスがようやく抑えられていますが、オミクロン株の懸念がありつつ、なんとか感染拡大が再度起こらないよう願うばかりです。

 

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このコロナ禍でのメンタル不全に関する調査結果が日本生産性本部から発表されました。案の定、増加傾向にあるという結果です。

 

リモート勤務も増え、なかなか顔を合わせて本音が言えなくなってきたことがあるのでしょう。

主な原因として、コミュニケーションの変化と位置付けています。pressrealease_mentalhealth2021.pdf (jpc-net.jp)

 

医療・介護現場は、職員同士のリモートによる業務は少ないものの、コミュニケーションの変化はどうでしょうか。

 ✅ 多くのスタッフが集まる会議が少なくなった

 ✅ 院内・施設内の集合研修はやっていない

 ✅ お昼はもちろん黙食

 ✅ 歓迎会、送別会、忘年会等は一切やってない

 

というように、一般企業同様リモートでなくても、コミュニケーションの変化は少なからずあります。

 

このような環境下ですと、自分はちゃんとできているのだろうか、頑張っているのをみてくれているのだろうかというように、『マズロー5段階欲求説』(アブラハム・ハロルド・マズローAbraham Harold Maslow, 1908 – 1970)の「社会的欲求」「自尊欲求(承認)」がなかなか満たされない状況にあるのではないかと思います。

 

 【マズロー5段階欲求説】⇐ 詳しくはこちらをご参考に…

 

「社会的欲求」は、組織の属していることの希望と安心感、さらにその組織で自分が好かれていることの希望と安心感です。今は、属してはいるものの会話ががないため、好かれているのかどうかがわかりません。

 

「自尊欲求(承認欲求)」は、属している組織で自分は認められれているのだろうか、認めてくれているならほめてほしいという気持ちです。

 

本来、「社会的欲求」が満たされて、次に欲しくなるのが「自尊欲求(承認欲求)」と言われて

います。

 

 

しかし同僚や上司との会話の機会があらゆる場面で制限され(飲み会もないですしね)、2つの欲求が満たされていない状態が長く続いているということが考えられるのではないかと思いました。

 

特に若年層のスタッフは、ほめると叱るの繰り返しによって、成長につながります。その声かけすらもおそらく減少してきている中、どうすればよいのでしょうか。

 

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そのような中で…ということではないのですが、私たちは仕事もプライベートも「誰かからほめられる(自尊・承認欲求)」+「自分は頑張れる」= 「前向きになれる」ことができるのだと思います。

 

「自尊・承認欲求」が満たされて、次にだから自分は頑張れるという気持ちがもっと大切だと思います。この「自分は頑張れる」という気持ちを「自己効力感」と言います。

 

 私の解釈ではありますが、「自己効力感」は、

  ✅ やればできるっ!

  ✅ 自分だったら頑張れるっ!

  ✅ こんなに頑張ってるんだから大丈夫!

 というような、自分を頑張らせる、元気にさせる思考回路だと思います。

 

「自己効力感」は、カナダの心理学者アルバート・バンデューラ(Albert Bandura,1925-2021)が提唱したキャリア理論で、4つの「頑張れるっ!」があるといわれています。

 

 ①成功体験

   過去にできたこと、達成したことから、頑張れるという気持ちになる

 

 ②代理体験

   他者のうまくいった姿や結果を見て、自分もできるという気持ちになる

    ※他者は、人だけではなく、ネットや雑誌からの情報も含まれます

 

 ③言語的説得

   周りで自分を見てくれている人から認められる言葉をもらって頑張れる気持ちになる

   (=自尊・承認欲求ですね)

 

 ④情緒的状態

   心身ともにまずは健康な状態をつくることで頑張れる気持ちになる

    ※美味しいものを食べる、気が済むまで寝る…etc.

 

 

「自分を頑張らせる人なんて、そんなにいないですよ。だからメンタル不全になるんじゃないですか」というご意見があるかと思いますが、自分を頑張らせる方法を知っている方が、メンタル不全を回避できることがあるのではないかと思うのです。

 

皆さんは、4つの自己効力感の高め方のうち、どれが一番、自分を頑張らせる要因だと思いますか。

 

自分が頑張れる自己効力感を知っておくとよいと思います。

 

 

■執筆:下田静香株式会社エイトドア代表取締役、セラピストリーダーズアカデミー編集長

法政大学大学院イノベーションマネジメント研究科修了(経営学修士MBA)。医療、介護、保育、障がい者施設の人事制度構築、人材育成・組織運営等研修等や講演、執筆等で活動。

 

全国の病院、福祉施設で実績を積み、それに付随する評価者研修講師は延べ800件を超える。回復期リハビリテーション病棟協会、東京都社会福祉協議会、神奈川県社会福祉協議会、香川県看護協会、長野県看護協会、八戸市消防本部他団体他で研修講師を務める。

 

著書に「介護施設のためのキャリアパスのつくり方、動かし方」(東京都社会福祉協議会)、「理学療法士育成OJTテキスト」(文光堂 共著)他。現在、「デーリー東北紙『私見創見』」にコラム執筆中。

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執筆者
下田 静香

下田 静香

代表取締役社長

経営学修士(MBA)
法政大学大学院イノベーションマネジメント研究科卒

青森県八戸市鮫町出身。1969年生まれ。
青森県立八戸北高校、群馬県立女子大学を卒業後、専門学校、大学、財団法人、社会福祉法人の事務部門を経験。その後、病院、介護施設の人事制度構築コンサルタントとして活動。40歳のとき、人事の専門家としての“道”を再構築するため、経営大学院に入学。病院における人材・組織開発、多職種連携を研究。

現在は、医療分野、福祉分野(介護、保育、障害)の人事制度構築、人材育成プログラム開発、人材育成に関する階層別研修、組織開発研修や講演、執筆等、人事組織アドバイザー、研修講師として活動中。クライアントの要望に添った丁寧なコンサルティング、すぐに使える(活かせる)研修プログラムと講義を大切にしており、人事制度構築では、全国の病院、介護施設で実績を積み、それに付随する評価者研修講師は延べ500件以上を手がけている。

著書に「介護施設のためのキャリアパスのつくり方、動かし方」(東京都社会福祉協議会)、「理学療法士育成OJTテキスト」(文光堂 共著)、「医療人材・組織の育成法」(経営書院 共著)

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