第5回 「歯医者の治療費が高い」というのは本当か?〜保険治療と自費治療(保険外治療)の仕組みと違いを知って、健康的な人生を送るために〜

最終更新日:2021年10月24日

「歯医者の治療費ってすごく高い(高額である)」あるいは「どうして歯医者ごとに値段が違うのか」と思ったことがある人も多いのではないでしょうか。実際に私もこのようなセリフを聞くことがあります。

 

今回はこの「高い」の疑問について解説してみたいと思います。

 

私たち歯科医師は歯科大や大学の歯学部を卒業し、歯科医師国家試験に合格して歯科医師免許を取得します。歯科医師免許を取得した後にほとんどの歯科医師は「保険医登録」をします。聞きなれない単語だと思いますが、「保険医登録」とは、患者さんが持っている保険証を使って治療します、という届け出です。

 

日本は「国民皆保険(こくみんかいほけん)」と言って国民全てが公的医療保険に加入していて、保険証があれば全国どこでも治療を受けられます。保険治療は保険診療のルールに沿って行うので、治療費は全国共通です。

 

保険のルールはとても複雑でいろいろな決まりがありますが、「国が決めた安全と思われる必要最低限の治療を受けられる」と考えていいでしょう。

 

必要最低限の治療なので、時には機能的なこと(使いやすさ)や審美的なこと(見た目)に不満を感じるかもしれません。

 

例えば、保険治療では入れ歯の形や大きさに制限があります。もし、歯を失って入れ歯になった場合「入れ歯は使いにくいので入れ歯以外のものにしたい」あるいは「入れ歯のバネが見えると年寄りっぽく見えるので入れ歯は嫌だ」となっても保険治療ではカバーできません。こうなると、インプラントと言って、入れ歯以外の治療を選択するしかありません。

 

 

インプラント治療は保険が適用にならないので、保険外治療(自費治療)となります。

 

自費治療の代表的なものにはインプラント治療や矯正治療(症状によっては一部保険適用あり)、歯を白くするためのホワイトニングやクリーニング、保険治療よりグレードの高い金属を使う、あるいは健康のために金属を使わない審美歯科などがあります。

 

これらの自費治療はそれぞれの歯科医院が独自の方法で行い、それに伴って治療費もまちまちです。

 

保険治療では窓口負担金が最高でも3割、窓口負担院以外は健康保険組合が医療機関に支払います。

 

例えば、窓口負担が3割の人が治療費として会計で3000円支払ったら、残りの7000円は健康保険組合が負担します。窓口負担が1割の人が1000円支払ったら、残りの9000円は健康保険組合が負担しているのです。

 

この話を聞いて皆さんはどう思われますか?

 

もし、治療費の全額(10割)を負担することを考えたら、窓口負担金が数割で済む国民皆保険は実はとてもありがたい制度であることに気が付くでしょう。

 

また、自費治療についても、歯科医院が提示する金額だけを聞いたら「高い」と思うかもしれません。しかし、保険治療ではカバーできない治療を可能にしたり、より美しくなるための審美的欲求を満たしてくれることになるかもしれません。保健治療ではなく、自費治療を選択することによって、自分の歯や口の中の健康年齢を伸ばす可能性もあります。

 

自分の健康を守れるのは自分だけです。歯科に限らず、「健康で長生きするため」には人生のどのタイミングで、どれだけの費用と時間をかけるのか。病気になってから治療に費用と時間をかけるのではなく、健康なうちに、そしてより健康になるために費用と時間をかける方がより豊かな時間を過ごせるでしょう。

 

治療費そのものの値段だけで判断するのではなく、治療結果が自分の人生をどれだけ快適にしてくれるかを考えるようにしたいものです。

 

「治療の価格よりも、治療によって得られる価値」も考えられるようになったら、より健康的な人生になるでしょう。

 

コラムニスト:大澤優子

株式会社ケロル 代表取締役
歯科医師

八戸市出身。岩手医科大学歯学部卒業後10年の勤務医生活を経験し、その後大澤歯科医院副院長となり現在に至る。

 

医院とスタッフのマネジメント、子育てで悩んでいた40代で個性心理學と出会い、個性心理學認定講師として一部上場企業、歯科デーラー、小児科医院などでの講演を多数行っている。

 

青森市大澤歯科医院「ママさん歯科医師Dr. YUKO」のブログで女性歯科医師としての目線で、日々の診療、働く女性として、子育てのことなどを発信中。

 

●青森市大澤歯科医院「ママさん歯科医師Dr. YUKO」のブログ
https://ameblo.jp/dr-yuko0610/

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執筆者
池上文尋

池上文尋

北里大学獣医学部 動物資源科学科卒 
大学時代、現在、人に使われている生殖医療の基本技術を学ぶ。
卒業後、外資系製薬企業に所属し、12年間、製薬企業のマーケティングスタッフとして勤務する。(ノバルティス・メルクセローノ・ファイザー)

特にセローノでは不妊治療に使うホルモン剤を中心に扱っていたので、不妊治療に関わる先生方と深く関わることになった。

2000年7月に株式会社メディエンスを設立、日本全国の産婦人科クリニックや病院の広報やブランディングをサポートする事業を開始。また、製薬企業向けのポータルサイトを制作、製薬企業のスタッフ教育に関わる。

不妊治療に造詣が深く、妊娠力向上委員会、胚培養士ドットコム、日刊妊娠塾という不妊治療関係のネットメディアを運営している。また、不妊治療関係の企業へのコンテンツ提供を行っている。

2002年より、オールアバウトの不妊治療ガイドとして16年間執筆・編集に従事。その他にも不妊に関する多くの著書、映画、調査などのアドバイザーとして関わる。

不妊治療の取材で訪れたクリニックや病院、関係施設は300を超え、日本で最も不妊関係の取材を行っている一人である。現在もその姿勢は変わらない。

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