第4回 口の中はうんこ(糞便)よりも細菌が多い! ~むし歯・歯周病・誤嚥性肺炎を撲滅して幸せな人生を過ごすための口腔内ケアの重要性~

最終更新日:2021年9月15日

人の体は口から入った食物を消化吸収し、肛門から排出します。入口(口)から出口(肛門)までが繋がっていて体内には常在菌(じょうざいきん)と呼ばれる細菌が多数存在します。

 

常在菌のうち、口の中に住みついた細菌のことを口腔内常在菌(こうくうないじょうざいきん)と言います。口腔内常在菌は400~700種類もあり、1mlの唾液(つば)の中には1億個、1gの歯垢(プラーク、歯くそ)の中には1000億個の細菌がいると言われています。

 

驚くべきことに、1gの歯垢(プラーク、歯くそ)に含まれている細菌の数はうんこ(糞便)に含まれている細菌数より多いのです。(水以外のものには5ml=5gとならないものがありますが、今回はわかりやすくするためにこのように表記します)

 

桁が多すぎてわかりにくいと思いますが、「口の中には桁違いの細菌が住んでいる」ということを理解して下さい。そして、この桁違いの細菌を上手にコントロールすることこそが歯で困らない秘訣となります。

 

口の中に桁違いに住んでいる細菌は私達の体にいろいろな悪さをします。代表的なものは歯科の2大疾患(病気)であるむし歯と歯周病、そしてここ数年注目されている「誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん)」です。

 

肺炎で死亡する高齢者は年々増えていますが、高齢者の肺炎の多くは誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん)と言われています。

 

普段私達は食べ物を口に入れて歯で咬んだ後、ごっくんと飲み込みます。物を飲み込むことを嚥下(えんげ)と言い、嚥下すると食べ物は口から食道に入ります。しかし、何らかの原因で食道へ入るべきものが誤って気管に入ることがあります。

 

間違って気管に入ることを誤嚥(ごえん)と言います。若い健康な人であれば気管に物が入りそうになるとゲホゲホとむせてしまいますが、高齢者はこれができないので、食べ物や唾液を誤嚥してしまいます。

 

誤嚥した時に食べ物や唾液に混ざって口の中の細菌が気管支や肺に入って起こる肺炎のことを誤嚥性肺炎といいます。口の中が清潔に保たれていれば細菌の数は減るので誤嚥性肺炎になる確率は低くなりますが、口の中が不潔だと気管支や肺により多くの細菌が入り込み、誤嚥性肺炎が悪化して高齢者の死亡原因となります。

 

高齢者の誤嚥性肺炎を防ぐためにはとにかく口の中を清潔にして、最近の数を減らしておくことが重要です。

 

しかし、高齢になったからといって急に口腔ケア(口の中を清潔にする)が出来るでしょうか?残念ですが無理でしょう。なぜなら誤嚥は老化現象のひとつであり、高齢になると身体機能が低下し、歯磨きひとつにしても若い頃のように歯ブラシを細かく動かして口の中を綺麗にするということが難しくなるからです。

 

また、リウマチなどの疾患で上手く歯ブラシを握れない、ブラッシング圧をコントロールできないなどということも珍しくありません。

 

「三つ子の魂百まで」ということわざには「幼い頃の性格は年をとっても変わらない」という意味があります。「三つ子の歯ブラシ百歳まで」ということわざはありませんが(笑)、幼少期のうちから口腔ケアが身についていれば幼児期から学童期(13歳ぐらいまで)、青年期(13歳から22歳ぐらいまで)、成人期(22歳から40歳ぐらいまで)の期間はむし歯を、壮年期(40歳から65歳ぐらいまで)から老年期(65歳以上)の期間は歯周病を、そして老年期以降からは誤嚥性肺炎を防ぐことができます。

 

先日、癌の患者さんの緩和ケアや人生の末期に近づいた高齢者を自宅で看取るために訪問診療をメインにしている内科の先生のお話を伺う機会がありました。人生の最後が近づいているが、まだ意識がはっきりしている方に人生の最後にやりたいことをお聞きすると自分が元気だったころに好物だったものを「食べたい」とおっしゃる方が多いそうです。

 

人生の終わりまであとどれくらいの時間があり、あと何回口から物を食べられるかは誰にも分かりません。

 

人生の最後に後悔しないように「口腔ケア」の重要性を理解し、直ぐに実行に移して健康な毎日を過ごしましょう。

 

 

コラムニスト:大澤優子

株式会社ケロル 代表取締役
歯科医師

八戸市出身。岩手医科大学歯学部卒業後10年の勤務医生活を経験し、その後大澤歯科医院副院長となり現在に至る。

医院とスタッフのマネジメント、子育てで悩んでいた40代で個性心理學と出会い、個性心理學認定講師として一部上場企業、歯科デーラー、小児科医院などでの講演を多数行っている。

青森市大澤歯科医院「ママさん歯科医師Dr. YUKO」のブログで女性歯科医師としての目線で、日々の診療、働く女性として、子育てのことなどを発信中。

●青森市大澤歯科医院「ママさん歯科医師Dr. YUKO」のブログ
https://ameblo.jp/dr-yuko0610/

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執筆者
池上文尋

池上文尋

北里大学獣医学部 動物資源科学科卒 
大学時代、現在、人に使われている生殖医療の基本技術を学ぶ。
卒業後、外資系製薬企業に所属し、12年間、製薬企業のマーケティングスタッフとして勤務する。(ノバルティス・メルクセローノ・ファイザー)

特にセローノでは不妊治療に使うホルモン剤を中心に扱っていたので、不妊治療に関わる先生方と深く関わることになった。

2000年7月に株式会社メディエンスを設立、日本全国の産婦人科クリニックや病院の広報やブランディングをサポートする事業を開始。また、製薬企業向けのポータルサイトを制作、製薬企業のスタッフ教育に関わる。

不妊治療に造詣が深く、妊娠力向上委員会、胚培養士ドットコム、日刊妊娠塾という不妊治療関係のネットメディアを運営している。また、不妊治療関係の企業へのコンテンツ提供を行っている。

2002年より、オールアバウトの不妊治療ガイドとして16年間執筆・編集に従事。その他にも不妊に関する多くの著書、映画、調査などのアドバイザーとして関わる。

不妊治療の取材で訪れたクリニックや病院、関係施設は300を超え、日本で最も不妊関係の取材を行っている一人である。現在もその姿勢は変わらない。

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