「透析技術認定士による透析の基礎の基礎」(9)~災害の心得について
八戸市ではえんぶりが中止となり、えんぶりが来ないと春の訪れを実感できない今日この頃です。新型コロナウィルスとの付き合いも早いもので1年が経とうとしています。
医療従事者からの新型コロナワクチン接種も始まり、早く全国の国民にも接種できれば良いですね。
青森ドクターズネットコラム「透析技術認定士による透析の基礎の基礎~透析を知ることでカラダを労わることを意識しよう~」第9弾「災害時の心得」です。一緒に学んでいきましょう。
今年の3・11で東日本大震災から10年の月日が経ちます。
今月2月にも宮城・福島地域にも震度6強の地震が発生したばかりです。
東日本大震災もこのような強い地震が2回来てからの歴史的に残る大震災がきました。
今回は災害の中でも震災について、透析にはどのような影響がでるのかまとめてみたいと思います。
1 透析中に災害が起きた時の心得
災害が発生した場合、状況により透析回路からの離脱を患者様自身で行っていただく場合があります。避難するか透析を続けるかスタッフが指示を出しますのでその場で待機し、スタッフの指示に従い落ち着いて対応しましょう。
1)地震が起きた場合、大きな揺れも十数秒から数分で必ずおさまりますので、慌てずにスタッフの指示に従ってください。
地震が発生した場合、患者様自身で身を守る事を忘れないでください。
まずは、穿刺針が抜けないように血液回路をしっかり握り、ベット柵につかまって、振り落とされないようにしましょう。
そして、毛布や布団をかぶって蛍光灯などの落下物を防ぐこと。
慌ててしまうのが当然ですが、覚えているだけでも対応できます。
2)停電が起きた場合
大地震が発生した場合は、停電も起こります。自家発電機を完備している施設も多くなりましたが自家発電機がまだ設備されていない施設もあります。各自の施設の状況を確認しておきましょう。
停電になると、自家発電機が作動しますので透析治療や冷暖房、テレビなどは使用できると思いますが自家発電機がない施設では場合によっては、血液が固まらないように患者様自身で手回しハンドルで血液ポンプを回してもらう場合もがあります。
自家発電機が完備しているが作動しない場合もあります。
スタッフの指示をまちましょう。
3)避難するとき
透析中止および避難が必要な場合がある場合は、避難のため離脱しなければなりません。
基本的には返血後に回路からの離脱を行いますが、緊急で避難する場合は血液を残したまま離脱する時があります。
緊急離脱セットが施設内にあると思いますが、東日本大震災で学んだ事は緊急離脱セットを使用せず、透析終了のように穿刺部を止血用具で使用し、ベルトで縛るこの流れが一番早くに患者様を避難させる事ができました。
透析患者様の人数が多い施設や少ない施設など様々対応が違うと思いますので施設スタッフの指示に従いましょう。
4)避難したあと
東日本大震災で問題になった事がこの避難場所です。
患者様が離脱後どこに避難するか場所を決めておく必要があります。
患者様をはじめ、職員も分散してしまうと全員避難できたのかの確認もできなくなります。
施設内で災害が起こった場合の避難場所がどこなのか施設スタッフに確認してみましょう。
避難場所または避難所では、穿刺部の消毒や傷の手当てを受けましょう。
被災状況から次回透析予定など今後の対応の指示が出るかもしれませんので帰宅の指示が出るまで待機しましょう。また、帰宅するときは、帰路の安全や移動手段の確認をしましょう。
透析を受けていない時の災害を受けた場合の患者様は、安全性の確保、透析を行うための医療機関との連絡を心得ておいてください。通院施設と連絡がとれない場合は、最寄りの保健所に連絡をとり、指示を受けることができます。保健所と連絡がとれない場合には、地域で指定されている拠点病院に連絡をとり指示を受けましょう。
「災害時要支援者透析カード」は、他の透析医療機関や避難所などで透析を受ける場合に非常に重要になります。必ず、携帯するようにしましょう。
2.腹膜透析を受けている患者様の場合(平常時の心得)
・バック交換機を充電し、常に使用できるようにしておきましょう。身近に使える自家発電機もあります。
・災害時要援護者透析カードを記入し、いつも携帯するようにしましょう。
・災害時の避難経路、避難場所を把握しておきましょう。
・避難後落ち着いた後に透析用品を取りに帰れる場合に備え、透析用品(透析液バック、キット、バッグ交換機、はかり、消毒用品など)や内服薬・インスリンなどを持ちだしやすいように1か所にまとめておきましょう。
・バッグ交換中やAPD施行中の災害時の対処について、どのような対処をするか通院中の透析施設で教わっておき、自分でできるように訓練しておきましょう。
・APD施行中の避難に備え、必要物品(カテーテルクランプ、バッグ交換機キットなど)をAPDのそばに手の届く範囲に準備をしておきましょう。
・停電時にバッグ交換機が使用できるように、手動モードの使用方法の習得や車のシガーソケットに接続して使用できるインバーターを用意しておきましょう。
・APDのみ施行中の方は、避難所でAPDが使用できない場合を想定し、ツインバッグなどの使用方法を習得しておきましょう。
・通院の透析施設、保健所、災害時拠点病院、関連、協力施設、CAPDメーカーの連絡先を把握しておきましょう。
3.在宅血液透析を受けている患者様の場合(平常時の心得)
・緊急持ち出し物品の用意をしておきましょう。
・災害時の避難経路、避難場所を把握しておきましょう。
・HHD管理施設と災害時(停電時、火災時、地震時、台風・洪水時・警戒宣言時など)の対策を決めておき、訓練しておきましょう。
・HHD管理施設と連絡がとれない時に備え、保健所、災害時拠点病院、関連・協力施設の連絡先を把握しておきましょう。
・自分の透析条件などを災害時要援護者透析カードに控えておきましょう。
・お薬手帳も緊急時持ち出せるように準備しておきましょう。
・日頃から十分な透析をしておきましょう。
・透析中の災害に備え、止血鉗子、終了セット、懐中電灯、トランジスタラジオなど緊急離脱ができる物品を透析場所においておきましょう。
・透析場所の周囲には倒れてくるような家具や荷物をおかないようにしましょう。
・透析機器、コンソール、ベットなどのキャスターのストッパーの固定については、HHD管理施設と相談して方針を決めておきましょう。
まとめ
いつ起こるかわからない地震・災害に備えておく必要があると思います。起こってからでは遅いので今回10年目の節目の東日本大震災を振り返る意味で震災についてまとめてみました。自分も東日本大震災からの記憶が薄れていく中、再度認識し災害に備える必要があるのではないかと思っています。
各施設のスタッフと災害について今一度話し合い再確認しておく機会を設けてみてはどうでしょうか?
自分自身の身を守る意味でも必要な事ですので再確認してみてくださいね。