透析技術認定士による透析の基礎の基礎~透析を知ることでカラダを労わることを意識しよう~
第一回:なぜ人は腎臓病になるのか?~腎臓の仕組みと腎臓病の種類
はじめまして。
このたび青森ドクターズネットにてコラム執筆することになりました看護師の中野雄宇と申します。
青森県は「健康あおもり21」で生活習慣病の発症予防や重症化予防に取り組んできましたが、2018年人口動態統計で糖尿病死亡率4年連続日本全国ワースト1位となりました。
このデータからわかるように、全国透析導入原疾患として糖尿病性腎症が透析疾患の第一位を占めており、青森では透析導入になる比率が非常に高いとも言えます。
「透析にならない為に生活環境や食事などどのように気をつければよいですか?」と透析導入になった家族をはじめ、様々な患者様からご相談を受けることが増えております。
このコラムで透析導入になる前に腎臓の仕組みや体調管理・生活環境について一緒に学んでいきましょう。
今後のコラムの予定について下記の通りの順番で書いていく予定です。
1)なぜ人は腎臓病になるのか?(今回のコラム)
2)透析の基礎知識
3)食事療法について
4)自宅での生活環境、家族へのサポート
5)透析治療の種類、現在の治療方法
6)糖尿病になる前に予防しよう。
7)透析治療をしない為の生活環境を見直す
8)腎臓透析と医療経済の話
9)腎移植の現状
10)腎臓内科医のインタビュー
11)患者インタビュー(血液透析・在宅透析)
12)臨床工学技士からのインタビュー
今回は「腎臓についての基礎知識について」です。まず初めに腎臓の仕組みや機能について理解を深めていきしょう
<腎臓の仕組み>
腎臓はソラマメのような形をしています。
握りこぶしくらいの大きさ(長さ 約10~11cm× 5~6cm、幅 4~5cmで、1つの重さは約120~150g)で、左右に1つずつあります。背中側の腰骨の少し上に位置しています。
腎臓の基本的役割は血液をろ過して、体内で不要な水分や老廃物を尿として排出することです。それぞれの腎臓には、大動脈から枝分かれした腎動脈を通じて体中の血液が流れ込みます。血液はこの腎動脈から徐々に細くなる動脈を通って最も細い細動脈に入り、糸球体と呼ばれる場所へ運ばれます。
糸球体では血液がろ過され、そこで尿のもと(原尿)になります。この糸球体からろ過された原尿は尿細管を通ります。尿細管では必要なものは吸収され再び血液に運ばれます。この糸球体と尿細管からなる小さな単位をネフロンといいます。
1つの腎臓には約100万個のネフロンがあります。 腎臓はただ尿を作るだけの臓器ではなく、人間が生きる上で大切な役割をいくつも受けもっています。
少し難しいですよね~。
腎臓は左右に二つある
片方でも機能を維持できる
尿を作る場所
この三点を覚えて頂ければ大丈夫です。
<腎臓の働き>
- 老廃物の処理
血液内の老廃物を除去し、体外へ尿として排泄させることにより、血液をきれいに保ちます。
- 体内の水分や電解質の調整
体内の水分を調節します。また、ナトリウム、カルシウム、カリウム、リンなどの電解質の調整を行います。
- 造血ホルモン(エリスロポエチン)の分泌
腎臓はエリスロポエチンという造血ホルモンを作り出しています。よって、腎臓の働きが落ちてくると貧血になります。
- 血圧の調整(レニン分泌)
レニンという血圧を上昇させるホルモンを作り出し、血圧の調節を行います。
- ビタミンD活性化
食物から摂取したビタミンDはそのままでは作用できません。腎臓で活性型ビタミンDとなり、体の中で作用します。
腎臓の働きも難しいですよね。
ここでは、腎臓が多数にわたり働いているのがわかると思います。
腎臓機能はその他にもありますが、
血液の老廃物を処理する
血圧を調整する
血液を作る
を覚えておいていただければなぜ透析をしないければならないのかが理解しやすいと思います。
<腎臓病の種類>
続発性の腎臓病とは、腎臓以外の病気が原因となって腎臓の機能に障害が出るものです。糖尿病が原因で起こる「糖尿病性腎症」、高血圧が原因で起こる「腎硬化症」、痛風が原因で起こる「痛風腎」などがあります。
- 急性と慢性
急性の腎臓病とは、症状が急激に出て、時間や日の単位で悪化します。「急性糸球体腎炎」が代表的です。あっという間に腎臓の機能が低下し、尿が全く出なくなることもありますが、多くは治療によって改善し、回復することが可能です。
一方、慢性の腎臓病は、ゆっくり静かに進行します。そのため、病状が末期に近くなるまで自覚症状が出ません。病気を発見するには、定期健診などでの尿検査が必要です。
慢性の腎臓病には「慢性糸球体腎炎」「糖尿病性腎症」「腎硬化症」「多発性嚢胞腎」などがありますが、根本的な治療法がなく、多くの場合は、腎臓の機能が果たせなくなる「腎不全」へ進んでしまいます。
慢性腎不全は回復することはほぼありません。腎臓がほとんど機能しなくなると、体外に排出されなくなった老廃物などが全身の臓器に影響を与える「尿毒症」という症状が出て、生命を維持することができなくなり、透析や腎臓移植が必要になります。
透析の原因となる疾患として
第一位・糖尿病性腎症(Ⅱ型糖尿病)
第二位・慢性糸球体腎炎(糸球体炎症によりタンパク尿や血尿がでる)
第三位・腎硬化症(高血圧)
が殆ど透析原疾患を占めています。
生活習慣での予防と初期の治療をきちんと行えば回避できる病気です。
専門医の受診や治療の必要性が重要であり「もしかして」と思う事があれば治療を開始しましょう。
<まとめ>
腎臓の機能と仕組み・腎臓病の種類についてご説明いたしました。
腎臓は大切な臓器であり様々な疾患が原因で機能低下を招きます。
生活にあまり支障がなく自覚症状もない為、大丈夫と思いがち。自覚症状が出てからでは手遅れになっている場合があります。
自分の身体は自分で守る為に日ごろから健康管理に気をつけ、健康に変化があれば自己判断せず病院受診をしましょう。
きちんと治療をすれば回避でき、もとの生活環境に戻ることができます。身近によく耳にする生活習慣病が原因となりますので、毎日の血圧測定、定期的に健康診断を行う習慣を身につけましょう。