「化学物質過敏症」をご存じですか?~知らないうちに体調を崩している原因は思わぬところに潜んでいる~

最終更新日:2024年1月28日

皆さんは「化学物質過敏症」という言葉をお聞きになったことがありますか?

ネットやマスメディアでも取り上げられているので聞いたことがある方もいるかもしれません。

 

「化学物質過敏症」とは、柔軟剤や消臭剤、室内のクロスなどが原因で体調を崩す方の総称です。本人が化学物質過敏症だと知っているのならまだしも、そのことを知らずに柔軟剤にまみれた衣類を身に着けて、体調を崩しているケースもあります。

 

自分で洗濯をしない人(お子さんや同居している家族など)の場合はさらに最悪です。自分の意志とは関係なく、「香害」として家族に健康を害されているのですから。

 

化学物質過敏症の原因となる物質を含むもの

 

物凄い柔軟剤の臭いがする衣類を着て通院するお子さんがいます。小学校の低学年なのでまだ自分で洗濯はできないでしょう。保護者(多くの場合は母親)の趣味で柔軟剤を大量に使っているのだと思われます。マスクをしていても頭がクラクラする臭いがします。

 

歯のことならどんなことでも保護者に伝えることはできますが、柔軟剤のことを歯科医師である私が注意するのもいかがなものか?と思い、治療が終わる度に「やっぱり伝えるべきだったのだろうか?」と悩んでしまいます。

 

10年以上前に海外製品が発端になった「柔軟剤ブーム」ですが、現在の日本のドラッグストアの柔軟剤売り場面積の広さにはただただ驚くばかりです。。

 

もちろん全ての柔軟剤がダメなわけではありません。衣類を柔らかく仕上げたり、消臭効果を期待できるものもあるようです。しかし、過度な「臭い」は時に凶器となります。

 

化学物質過敏症の症状

 

歯科領域でも「臭い」はしばしば問題になります。歯科での「臭い」の代表的なものは「歯周病による口臭」でしょう。自分が歯周病で酷い口臭を発しているのに本人は全く気が付いていない、、、という場面に遭遇した経験がある方もいらっしゃるかもしれません。

 

今年の5月にコロナが5類に引き下げられ、脱マスクとなりましたが、口臭が気になってマスクを外せない、という方もいます。口臭はデリケートな問題なので、周囲の人が本人に事実を伝えるのが難しい、というのも悩ましい問題です。

 

口臭は口から発生して上の方に臭ってきます。鼻は口よりも上にあるので、自分の口臭をいつも嗅いでいます。

 

自分で自分の口臭を不快に感じている患者さんの場合「マスキング」と言って他の臭いで口臭を誤魔化そうとします。マウスウオッシュなどで別の「臭い」を重ねるのですが、一時的な気休めにはなりますが、歯周病の治療をしない限り口臭がなくなることはありません。また、口臭がきつい人に限ってコロンや香水を多用する傾向があるような気がします。

 

 「化学物質過敏症」と「歯周病」。全く関係がないように思われるかもしれませんが、どちらも「自覚症状がないまま、知らないうちに体調を崩している」という共通点があります。

 

香り成分はほとんどが人工香料のため、喘息や呼吸器疾患の原因になることがわかっています。慢性炎症である歯周病は、歯周病菌が毛細血管に入り込んで全身を駆け回り、脳血管障害や認知症などの引き金になります。

 

知らないうちに体調を崩している原因は思わぬところに潜んでいる可能性があります。

 

「なんとなく体調がすぐれないことが続いている」という方は体のチェックはもちろんですが、身の回りの物をチェックしてみる必要もありそうですね。

 

コラムニスト:大澤優子

株式会社ケロル 代表取締役
歯科医師

八戸市出身。岩手医科大学歯学部卒業後10年の勤務医生活を経験し、その後大澤歯科医院副院長となり現在に至る。

医院とスタッフのマネジメント、子育てで悩んでいた40代で個性心理學と出会い、個性心理學認定講師として一部上場企業、歯科デーラー、小児科医院などでの講演を多数行っている。

青森市大澤歯科医院「ママさん歯科医師Dr. YUKO」のブログで女性歯科医師としての目線で、日々の診療、働く女性として、子育てのことなどを発信中。

●青森市大澤歯科医院「ママさん歯科医師Dr. YUKO」のブログ
https://ameblo.jp/dr-yuko0610/

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執筆者
池上文尋

池上文尋

北里大学獣医学部 動物資源科学科卒 
大学時代、現在、人に使われている生殖医療の基本技術を学ぶ。
卒業後、外資系製薬企業に所属し、12年間、製薬企業のマーケティングスタッフとして勤務する。(ノバルティス・メルクセローノ・ファイザー)

特にセローノでは不妊治療に使うホルモン剤を中心に扱っていたので、不妊治療に関わる先生方と深く関わることになった。

2000年7月に株式会社メディエンスを設立、日本全国の産婦人科クリニックや病院の広報やブランディングをサポートする事業を開始。また、製薬企業向けのポータルサイトを制作、製薬企業のスタッフ教育に関わる。

不妊治療に造詣が深く、妊娠力向上委員会、胚培養士ドットコム、日刊妊娠塾という不妊治療関係のネットメディアを運営している。また、不妊治療関係の企業へのコンテンツ提供を行っている。

2002年より、オールアバウトの不妊治療ガイドとして16年間執筆・編集に従事。その他にも不妊に関する多くの著書、映画、調査などのアドバイザーとして関わる。

不妊治療の取材で訪れたクリニックや病院、関係施設は300を超え、日本で最も不妊関係の取材を行っている一人である。現在もその姿勢は変わらない。

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