経営学修士(MBA)
法政大学大学院イノベーションマネジメント研究科卒
青森県八戸市鮫町出身。1969年生まれ。
青森県立八戸北高校、群馬県立女子大学を卒業後、専門学校、大学、財団法人、社会福祉法人の事務部門を経験。その後、病院、介護施設の人事制度構築コンサルタントとして活動。40歳のとき、人事の専門家としての“道”を再構築するため、経営大学院に入学。病院における人材・組織開発、多職種連携を研究。
現在は、医療分野、福祉分野(介護、保育、障害)の人事制度構築、人材育成プログラム開発、人材育成に関する階層別研修、組織開発研修や講演、執筆等、人事組織アドバイザー、研修講師として活動中。クライアントの要望に添った丁寧なコンサルティング、すぐに使える(活かせる)研修プログラムと講義を大切にしており、人事制度構築では、全国の病院、介護施設で実績を積み、それに付随する評価者研修講師は延べ500件以上を手がけている。
著書に「介護施設のためのキャリアパスのつくり方、動かし方」(東京都社会福祉協議会)、「理学療法士育成OJTテキスト」(文光堂 共著)、「医療人材・組織の育成法」(経営書院 共著)
下田静香が実践するコンサルティング・研修の3つの軸
- 現場を知る(丁寧に観る、丁寧に聴く)
- 現場スタッフを巻き込む(参加型)
- すぐに動ける&使える解決方法を提案する(即効性)
このたびは青森にご縁のある医療関係者インタビューということで、当サイトのコラムニストでもある下田静香氏にインタビューを行いました。
下田さんは医療機関の一番の悩みや課題である人の問題(人事・労務・研修)の部分をサポートする専門家です。日本全国の病院、診療所、介護施設を中心に活躍されています。
八戸市のご出身ですが、八戸が好きすぎて会社名を「エイトドア」と命名したぐらいです(笑)。
日本でも珍しい職種の一つだと思います。興味の湧く方も多いのではないかと思います。インタビューの内容、ぜひご覧くださいね。
目次
今のお仕事について教えてください。
医療と福祉(高齢者施設、障がい者施設、保育)の人材育成とチーム作りのコンサルティングと教育研修です。具体的には、人事制度(評価制度や給与制度他)の構築運用コンサルティング、それに付随する評価者研修や目標管理研修、階層別研修の企画や講師をしています。
人事制度や研修というカタチになることを実施するだけではなく、現場のスタッフの人についてのお悩みカウンセリング、アドバイス行っています。たまに、現場管理者の愚痴を聴いたりすることも・・・。外部でなければ話せないということもありますし、話すことでスッキリして現場に戻っていただくこともある意味、外部の人事アドバイザーの役割で、内部でできない人事のことをサポートする役割だと思っています。
それとは別に全国の医療・福祉で活躍されている皆さんのお役に立ちたいという気持ちから、八戸、神戸、高松、長崎にて定期的に人材組織マネジメント関連の公開講座も開催しています。15テーマぐらいあるプログラムで年間計画を立てて開催しています。10名程度の定員で、受講者が質問しやすい、意見交換がしやすい研修環境が特徴で、手前味噌ですが満足度が高く、リピーターさんもいます。今後は、開催拠点を増やして展開する予定です。ただ今は、新型コロナウィルス感染防止の視点から集合すること(密集)は避けなければいけない状況ですので、「Stay Home家で学ぼう!」と題して、自宅で気軽に受講できるオンライン公開講座を開催しています。「学びを止めてはいけない」という思いからです。
また、医療人事組織の情報発信ステーションとして、株式会社メディエンス代表取締役の池上文尋さんと共同で「医療経営オンライン」という情報サイトを運営しています。7名の現役セラピスト、クリニック事務長、調剤薬局経営者の皆さんに交替で記事を執筆していただいております。医療を支える現役の皆さんのまさに生の声を綴ってもらっています。
青森の八戸市鮫町のご出身と伺いましたが、どのようなご経歴か詳しく教えてください。
青森県南の岩手県との県境に位置する八戸市鮫町で生まれ育ちました。八戸市立鮫小中学校、青森県立八戸北高等学校を卒業し、群馬県立女子大学英文科に進学しました。その後、専門学校、大学、財団法人の事務、社会福祉法人本部の仕事を経て、現在の仕事に至っております。
当初は、企業に属しながらコンサルティング業をしておりましたが、2018年2月に株式会社エイトドアを設立し、2019年4月に八戸支社を設置しました。
また、私の母が長年(25年間ぐらい?)、鮫町にあったクリニックの事務の仕事をしておりました。小さいころから医療現場の表も裏も自分の眼で見てきたことが今の仕事に大いに役に立っていると思います。
今のお仕事で現場に求められているニーズとはなんですか?
やはり中長期にわたる人材の育成です。人材の育成は、今の現場に求められるというよりも過去から未来にわたって取り組み続けることだと思います。その中でも、これも過去からずっと言われていることだと思われますが、「リーダー」の育成はここ2~3年、特にニーズとして高まっています。日本社会の変化に伴い、医療、福祉業界の組織構造もそれに併せて変化していかなければならなく、その時その時の組織に必要なリーダーのカタチも変化します。だからこそ、リーダーの育成は、医療だけではなく一般企業も含め、人材組織育成には常に求められるニーズなのだと思います。
また、大きな組織(病院)になると院内教育研修体系とそれぞれの研修プログラムの企画の相談も増えてきています。中長期の人材育成となると、若年層、中堅層、ベテラン層から管理職層、どの階層も恒常的な教育が必要なはずです。しかし、医療現場の場合、医療という本業の専門知識や技術を磨くことを優先しなければならないため、人材づくり組織づくりは“二の次”と思われていたのは否めません。ただ、医療経営もそうは言っていられなくなりました。黙っていても患者さんは来てくれません。いい医療、いいサービスが提供できる人材の育成、その人材をチームにして組織を運営するリーダーの育成など「医療」と「組織」両方を成立させる仕組みとして必要になってきているのだと思います。
クリニックですと開業前の職員研修のニーズが高いようです。開業時はほとんどの職員は他院からの中途採用ですので、自院のクリニックの方針、患者対応のレベルの引き上げなど「最初が肝心」という意味でのニーズのようです。
医療現場での慢性的な人材・人員不足から、できるだけ早期に次世代育成に着手しておかないと…という危機感の表れでもあると考えています。「人が育つには3年かかる」。根拠があるわけではありませんが、それだけ時間がかかるからこそのニーズだと認識しています。
お仕事のやりがいについて教えてください。
人事の仕事の成果は、すぐに出るものでもなく、またその成果が見えにくいものです。そういう特性がある一方で、研修を受講した職員の上司の方から、1年前と比べるとよく気が付くようになったとか、しっかり意見を述べるようになったとか、何かしらの行動変容(変化)のことばをいただけると嬉しく思いますし、何よりもその職員が認められて活躍していることが嬉しいです。
嬉しいことにこの仕事をし始めて、10年以上お付き合いしているクライアントさんが結構います。長いところですと15年ぐらいの医療機関もあり、リピートしてくださることが何よりもやりがいにつながります。外部アドバイザーの立場ですが、長いおつきあいの医療機関は、同じ組織の一員として携わることができたことに感謝しています。また、私がアシスタント時代にクライアント先の窓口としてやりとりしていた方が今は、人事部長や事務長で現在活躍されていることも共に学びあった仲間という思いがあり、この仕事の私のやりがいでもあります。
お仕事上の思いやこだわりがあれば教えてください。
「思い」は、携わることができた医療機関で働く皆さんが「もっと頑張りたい」、「頑張ってよかった」、「つらいこともあるけれどこの病院で働くことが楽しい」と思っていただけるために自分は何ができるのかを大切にしているという点でしょうか。
大学院で学んだことの一つなのですが、「誰のために何をするか」を常に自問して仕事に向き合っているつもりです。
こだわりは、2つあります。私の仕事の一つに、人事のことを伝える、理解してもらう、納得してもらう、その上で自分で考えて行動してもらうことがあります。
そこで、こだわりの1つ目は、「相手のよく使うことばを使って伝える」です。人事マネジメントの用語は、医療機関の皆さんにとっては日常用語ではありません。人事制度、評価制度、目標管理他、人事マネジメント用語は、私は仕事ですから日常用語ですが、職員の皆さんにとっては初めて聞く言葉だったりするわけです。特に人事制度を導入するときの職員説明会では、制度に前向きに向き合っていただくためには医療現場の皆さんが理解・納得していただけるよう心がけています。
2つ目は、「医療現場の事例を使いながら理解、納得してもらうように伝える」です。1つ目にもつながりますが、こちらが伝えたい人事のことを日常の仕事でイメージしやすいように事例を交えて伝えています。
この2つのこだわりは今のところいい効果が得られているので、これからもこだわり続けたいと思っています。
青森の医療について思うこがあればコメントください
八戸で人事マネジメントの公開講座を開催して思ったことなのですが、県内で働く医療現場の職員の皆さんの自己研鑽の意識が高いということです。外部開催の教育研修はやはり大都市での開催が多く、地方の方々が参加する機会が少ないのが現状です。仙台や都内までいかないと学べなかったという声を聴きました。近場で学べるのが嬉しいという声でした。それを聞いて、学ぶ機会があれば、学びたいという人材が県内の医療機関、福祉施設にはたくさんいらっしゃるということだと思います。これまで参加してくださった職員の皆さんは、勤務している病院のこと、施設のこと、チームのこと、部下やメンバーのことを今よりももっとよくしたいという強い思いで参加してくださっています。このような意識の高い職員の皆さんが県内の医療機関は福祉施設を引っ張ってくださっていることに心強い気持ちになりました。
青森の新聞にコラムを連載されているということですが、詳しく教えて頂けますか?
三八地区地方紙「デーリー東北」紙の「私見創見」というコラム欄に2017年から定期的に執筆しております。人材育成のこと、子育て(と言っても今年で20歳になりますが)で気づいたこと、自分の仕事のスタイルや考え方などをテーマに書いております。これまでは医療や介護の専門誌で執筆することはありましたが、一般紙のコラムを執筆するにあたり、老若男女すべての皆さんが読んでわかりやすいということを気にして書いています。おかげさまで、コラムを読んでくださったことをきっかけに研修につながったケースもありました。
文章を書くというのは、自分の考えていることの整理になり、書いているうちに新しいことに気づいたりすることがあるので、とてもいい機会をいただけたと思っております。またちょっとだけ、故郷に錦を飾れたかな?(笑
ご自身の趣味やこだわっているものがあれば教えてください。
趣味は、「乗り物」に乗ることです。電車(新幹線も)、飛行機が大好きです。出張で移動が多い仕事で、よく「長時間の移動で大変ですね」と言われることがありますが、乗り物に乗ることができるので、全然苦になりません。
電車は、新幹線が大好きで、東京駅の新幹線ホームで結構時間を過ごしたりもしていました。また、盛岡駅で東北新幹線「はやぶさ」と秋田新幹線「こまち」の連結を見たりもしましたね。最近は、神奈川県内での仕事が増えてきて、相鉄線(相模鉄道)の新型車両に乗るのが楽しみでもあります。
八戸線ももちろん大好きです。ただ、一昨年前?新型車両に置き換わったのが残念でしたが、今は車窓から見える海を楽しみながら乗っています。また、飛行機は、翼の近くに座席指定してエンジンを見るのが好きです。もちろん、プロペラ機は必ず翼の横に座席指定です(笑
今後、どのような活動を行っていこうと思われていますか。将来のビジョンについて教えてください。
新型コロナウィルス感染拡大から、これまでの「出向いてコンサルティング、出向いて講演」という形が大きく変化しました。4月以降、県外に出ることはなくなりました。リモートによるコンサルティングや講義、講演に取って代わりました。
自分では、顔を合わせて話すことが大切という認識が強かったのですが、実はリモートに慣れてくると、そのメリットもあるということに気が付きました。
今後の活動は、仕事スタイルの転換することを前提に、これまでの対面スタイルコンサルティング、講演を残しつつも、リモートスタイルも加え、リモートだからこそ全国で簡単につながることができるメリットを活かし、最近、自分も力を入れている医療機関の若手リーダーのネットワークづくりを構想中です。近いうちに実現したいと動き始めています。
青森ドクターズネットの読者にメッセージがあればぜひ!
おいしい食材がある青森県。しかし、短命県という課題も抱えています。
おいしいものをおいしく食べて、そして長く食べて、身体も豊かに、心も豊かに暮らすためにぜひ、青森ドクターズネットから、今よりももうちょっとだけ自分の身体を考えるための情報基地としてお読みいただければなぁと思います。
「青森ドクターズネットでも専門家コラム『ヒト・コト(人事)日記』で執筆しています。
<参考サイト>
株式会社エイトドア
医療経営オンライン