青森市市長 小野寺晃彦氏インタビュー ~ふるさとを守り、変革し、輝かせるのが我々の仕事である~

最終更新日:2021年1月25日
青森市役所
青森市市長
小野寺 晃彦

【プロフィール】

生年月日 1975年(昭和50)7月25日
家族構成 妻(青森市出身)・長男・長女・次女

資格   中小企業診断士(2015(平成27)年登録)

趣味   サッカー(フットサル)・アイスホッケー

 

【略歴】

1994年(平成6年)3月、青森県立青森高等学校卒業。

1999年(平成11年)3月、東京大学経済学部卒業。

同年4月、自治省(現・総務省)に入省。

宮崎市財務部長、愛知県総務部財務課長などを歴任。

2016年11月 、青森県青森市市長に就任、今に至る。

2020年2 東北市長会会長に就任。

このたびは青森ドクターズネットとしては絶対にインタビューしたいと思っていた小野寺市長にお話を伺う機会を頂戴しました。

 

2020年5月にサイト立ち上げた時に市長へのインタビューを目標の一つに掲げておりましたが、年内にそれが達成できたことは我々としても嬉しい限りです。

 

なぜ市長のインタビューを重要視していたのかというと、やはり青森の短命(市)県返上のカギになるのは自治体の取り組みによるところが大きいと感じているからにほかなりません。

 

いくら我々が動いていても長年続いてきた習慣や人の意識はなかなか変えられないという部分があります。しかし、自治体が中心となって、「みんなで変えて行こうよ、健康寿命伸ばして幸せな時間を伸ばそうよ」とメッセージを送り続けてもらうことが大きな力になると信じているからです。

 

ということで、小野寺市長のインタビュー内容をお送りしたいと思います。

 

市長になろうと思われたきっかけについて教えてください。

4年前に青森市民だった方はある程度、ご存知かと思いますが、青森市の駅前にあったアウガと言う第三セクターが当時、24億円の赤字を抱えてにっちもさっちもいかない状況の中、前市長さんがお辞めになられました。

 

まさに火中の栗を拾う人はいないかと言うことで、市議会議員の先生方が声をかけていただく中に青森出身の私もいました。青森高校を出てから20数年離れていましたが、行政の地方創生を担当していましたのでそう言うところに目をつけていただいたのだと思います。そして、市長選に出て結果として64,000票を得て市長をさせていただくことになりました。

 

直ちに、第三セクターのアウガについては特別清算をしました。また、10階建てだった市庁舎を3階建てにするなど、具体的な政策課題が目の前にあり、いわゆる即戦力として求めていただいた形で青森市にUターンしたという経緯です。

 

最初から政治家になろうと思われていたのでしょうか。

かつて国家公務員として地方創生を担当していましたが、これは政治家もワンプレーヤーです。そのため、国会でもお付き合いはたくさんありましたのでよく知っている業種の方々では合ったのですが、まさか自分がなるとは思いませんでした。

 

当時、地域系のコンサルタントの方が青森市のアウガをめぐる状況を見て「青森市は墓場だ」と言ったのです。地方創生は成功もあれば失敗もあります。しかし、それについて自分の故郷をそう言われることは「許しがたい!」という思いもありました。

 

私は愛知や宮崎、福島など色々なところで地方創生のサポーターとしてやってきましたが、自分の故郷がまさにピンチの状況で声をかけられたということも、市長をさせていただくきっかけにもなりました。

 

だから、最初からなりたかったと言うわけではありません。本当に縁ときっかけ、そしてある意味ピンチがあって今に至っていると言うことですね。

 

青森市の医療面についての課題をどのように捉えていらっしゃいますか。

もちろん、青森市と青森県は短命県、短命市と言われて久しいですよね。敢えて健康寿命という言葉を使いますが、いわゆる平均寿命が短いと。それでも大分、改善はしたのですが、しっかりと健康寿命を延伸し、みなさんがずっと健康で長生きしていくことは基本であり、これがまずは最大の課題です。

 

健康面をより強化していく中で、医療というのは中核を成します。高齢者のみならず、若い方も早いうちから食育や運動環境など基礎的なことを含めて、全世代的に健康づくりをしていくというのが青森市の課題の一つです。とりわけ、その中で医療面が果たす役割は大きいと思っています。

 

救急も含めた行政の医療提供体制について、どのような現状なのでしょうか。

現在、青森県立中央病院・青森市民病院はじめ民間の病院にもたくさん手をあげていただき、救急をまわしています。

 

今は、新型コロナウイルスのことがあり、他府県では救急医療の逼迫ということが何度も言われていますが、青森県は幸いにしてクラスターは何度かありましたが、今のところは抑え込みができています。これはやはり、公的病院と民間病院の連携がこの地域の医療を支えてくれているためです。

 

しっかりと支えてくださる民間の病院とともに官民連携という形でワンプレーヤーとなっているのが青森の救急体制であり、その下支えをしてくださっていると思っています。

 

一方で、在宅面についてはまだまだというところがあります。昨今は、看取りについても自宅でという声がある中、どうしても対面診療やその他の医療法上の規制も含めて色々なことがありますので、必ずしも在宅医療が青森市の最先端というわけではありませんでした。

 

ですから、市立浪岡病院において、地域系の病院なので在宅医療で往診をし、住み慣れた自宅で最後まで暮らしていくことも含め、予防医療から在宅の見守り体制も含めた形で広げていくことに今、チャレンジをしています。

 

青森は陸奥湾と東西に広がったエリアです。その中で8市町村連携という取り組みを行なっています。特に、東に位置する地域では在宅医療について共に学び合っていこうという動きもあります。財政措置も使いながら、まさにこれから着手していこうとしているところです。

 

全国ではクリニックの継承問題が取り沙汰されていますが、青森市についてはいかがでしょうか。

それはもう、青森のみならず全国的な問題ですよね。

一般企業もそうだと思いますが、特に医療面については技術を持たれた方同士の引き継ぎになります。お子さんやあるいはお孫さんが医師であるという条件が必要となりますので、なかなか厳しい部分がありますね。

 

小さいクリニックさんは電子カルテも含めたIT化が進まず、昔ながらの紙カルテが生きている部分もありますので、そういう意味でも技術的なハードルがあり継承が進んでいないという側面があります。

 

ただし、青森市においては比較的、電子カルテも含めてかなり積極的に先生方が取り組んでおられますので、そういう意味では青森市に限って言えば大分、ハードルは下がってきています。また、新しい医療にも積極的に取り組んでいこうという先生が多いですね。

 

青森市は港町で発展した街なので、新しいことをやろうよと言った時に意気に感じる街の雰囲気があります。それが医療面の事業継承においてもハードルを少し下げている部分ではあるかなと感じています。もちろん、課題はたくさんありますので、我々も医師会さんと一緒に連携をしてサポートしていく体制に入っていこうと思います。

 

青森市における新型コロナウイルス対策についてお聞かせください。

もちろん、今は市の取り組み全ての先頭は新型コロナウイルス対策ですから、特に医療や検査面を第一にしてきました。青森を守るという取り組みに全力を尽くした一年でしたね。

 

今は急病センターを地域外来・検査センターに置き換えて、市民が誰でも毎日、必要な医療や検査が受けられる状態にしています。これは、マンパワーが必要なので、青森県内でも八戸や弘前であってもなかなかここまではいかないだろうと思ったところ、青森市医師会さんを中心に、先頭切ってやろうと言っていただいたのが6月なので、かなり早い段階からの取り組みになります。

 

2波、第3波であっても市民誰もが毎日行けることが大きな心の支えになったという声をたくさんいただいています。そういう意味では、大きな最先端の取り組みをさせていただいたのではないでしょうか。

 

一方で、12月からは民間における検査、いわゆる新型コロナウイルスの診療・検査医療機関と呼んでいますが、こちらの体制が整いました。これは残念ながら青森県は決して、全国的に早い方ではありません。

 

ただし、そうは言っても体制を整えてスタートを切った中では、青森市の40近い医療機関にご協力いただいいています。かつて、急病センターでは1日に40件検査をしていたのがいまはその8倍以上、330件以上の検査ができるようになりました。検査能力が急拡大しており、今まさに第3波、第4波と戦っているところです。

 

その中で診療・検査機関が見つけてきた陽性患者はたくさんいるのですが、これは逆に網目が広がったからだと考えています。クラスターも幸い、今は抑え込めている状態です。

 

青森県全体で考えると、なかなか町村部については課題が残るところではありますが、青森市について言うと本当に先進的で協力的な民間医療機関の皆さんのお力添えと、公的な医療機関の協力体制により、新型コロナウイルスは今の所抑え込んでいる状態だと思っています。ただ、まだまだ予断を許さない状態ではありますが。

 

青森市における少子化対策について教えてください。

青森市は今、男性不妊治療も含めて助成制度を持っていますし、助成を続けているところです。

 

菅総理がおっしゃっているように所得制限を外していく動きもありますが、これはまさに制度が動いているところですので、当然、我々もそれに連動しながらより広く取り組んでいこうと思っています。ただ、どうしても多額の経費がかかる話なので、国や県と一緒にやっていくと言う形にはなりますが、そこは全力を尽くしたいと思っています。

 

また、青森市のみならず県全体の課題ですが、決して不妊治療に取り組める施設が多いわけではありません。首都圏であれば複数の選択肢の中から選ぶことができますが、青森市であっても必ずしもそう選択肢があるわけではない中で、先生方の協力で成り立っている面もあります。

 

金銭面もさることながら、医療体制というか少子化対策としての不妊治療として捉えるのであれば、医療面のさらなる強化を県と一緒に進めていく必要があります。

 

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医療における情報公開について、行政として取り組まれていることはありますか。

青森県全体でもウェブ運用をして、医療情報を提供しているのはご存知の通りです。

ただ、医療法の制約などもあり、限界がある中での情報公開になっていることは事実です。オンライン診療についても、色々な議論が続いているようなのでその辺りは市や県のレベルをこえて国レベルの話になってくると思います。

 

青森市立浪岡病院では、電話診療だけではなくウェブ診療にも積極的に取り組んでいます。一般の方もオンラインで診療が受けられますが、施設の方でコロナのリスクがあって出かけにくいという中でこういうツールを使うことは新たなニーズの掘り起こしになっています。そういう意味では、オンライン診療の新たな可能性を感じています。

 

診療自体のウェブ化やDX(デジタルトランスフォーメーション)については時代の流れだと思いますので、しっかりと捉えて取り組んでいきたいと思います。

 

医療面における青森市の今後のビジョンについてお聞かせください。

コロナ前に持っていたイメージとコロナ後のイメージは結構違っています。コロナ前は、国の地域医療構想では、ローカルな病院は廃止の方向で動いていました。しかし、コロナ後の地域医療、全体構想は大分異なり、感染症や高度医療がしっかりとできることに注目が集まっています。

 

東京や大阪は、今そんなことを語れないくらい感染者が増えていますが、青森だっていつそういう状況になってもおかしくありません。そうすると、高度な医療をきちんと提供できる医療体制が確立しているかどうか、これは理想像を語る時にビフォーコロナとアフターコロナでは大きな違いだと思います。

 

まだ大きな波の中にいますが、その中でもある程度、考え方を変えていかなければなりません。いざという時に頼れるのが救急医療や高度医療ですが、その部分をいかに強くしていくかという課題はありますね。

 

青森県内において青森市は、弘前市と並んで県の医療を支えていかなければならないポジションなので、そういう意味では都市面の医療の理想形としてさらに追求していかないといけないですよね。もちろん、今の新型コロナウイルスの波を乗り越えてからの前提ではありますが、もっと議論を深めないといけないという考えが私自身にもあります。

 

結局、2020年に世界全体が新型コロナウイルスに覆われ、ある意味ビフォーコロナ、アフターコロナという言い方が普通になされていることは、大きなターニングポイントだと思います。

 

じゃあ、2021年は何をするのかというと、アフターコロナでは医療面、特に感染症を含めた高度医療を提供できることが街の生き残りという意味でもすごく重要になってきます。選ばれる街としての生き残り策なのかもしれませんが、ある程度の医療がきちんと提供できることが必要条件であり、今まさにそれを走っている前提で理想的な医療面を考えていかないといけないと思っています。

 

医療におけるIT化も急速に進んでいくのでしょうか。

教育現場でもかつて、先生方がなかなかパソコンを使えないという雰囲気がありましたが、もうそれどころではありません。学校閉鎖の時に直面しましたが、オンラインでも代替授業ができることが今、求められています。

 

医療面でも、同じことが実際に起きていますよね。10年に一度、大きい感染症がくるという中でウェブやDXをやるやらならないではなく、やらざるを得ないという状況があります。

 

青森市民病院では電子カルテをもう10年以上前から導入していますし、市立浪岡病院は建て替えを控えており、その時には最先端の医療用画像管理システムが導入される予定です。

 

当然、それはクラウドで医療データなどの画像管理をしていくことになります。病院をリニューアルするにあたってコロナありきの状況で考えなくてはいけないという前提がありますよね。やはり、ITを使った見守りや在宅医療、そしてオンライン診療がある意味、普通になっていくのだと思います。

 

市民の方々へのメッセージをお願いします。

2020年は故郷を守るために1年間全力を尽くした年でした。2021年を考えた時に、昨年はなくて今年あるものと言えば、ワクチンですよね。色々な情報が飛び交っていますが、2021年という枠の中でワクチンが登場することは間違いなく、その時に接種にあたるのは市町村が最先端です。今、イギリスやアメリカが取り組んでいますが、今年中に必ずやらなくてはいけません。

 

2020年は先の見えない戦いがありましたが、2021年はワクチンをしっかと届けて乗り越えていくという年になります。ですから、我々としては、そこまでしっかりとしのいでいく守りの体制、守備をしつつ、攻めの医療に取り組むことになります。

 

保健所中心にはなりますが、一番身近な自治体である市町村がワクチンを届けていくことで市民の命を守る必要があります。もちろん、街づくりをはじめ、色んな布石を打たせていただいているつもりですが、とりわけ医療面では2021年という年が、かつてのように普通に集まって話ができ、笑顔で青森という街を楽しめるようにするため、その期待に応えていきたいと思います。

 

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取材の後になんと記念撮影にも応じて頂きました!

 

<まとめ>

私自身、元横須賀市長の吉田雄人氏の主宰するGR人材育成ゼミにおいて官民共同で社会課題をどのように解決するのかというテーマで学ばせてもらっていることもあり、小野寺市長の様々な取り組みに関しては、非常に興味がありました。

 

今回お話を伺って、青森市の首長というだけではなく、日本を代表するリーダーのお1人だと確信しました。青森という場所を通じて、どのように社会課題を解決し、人々の幸せの最大公約数を求めていくのか?

そんなことを日々考え抜いて、今の仕事をされているということが良く分かりました。

 

我々は医療に携わるものですが、医療だけではなく、様々な面で今後、青森市は大きく変わっていく、そして輝いていくと感じました。

 

小野寺市長には厚かましくも、「次も別テーマで取材させてください!」とお願いしたところ、ご快諾頂きました。疑問や改善策を投げかけても、それを喜んで受けて頂ける首長がいるということは本当に心強いなと思いました。

 

今後も引き続き、小野寺市長と青森市の医療や行政について記事にしていきたいと思っております。

 

年末の超多忙な中、お時間を頂戴した小野寺市長と今回、あお☆スタピッチコンテストと小野寺市長との調整役を担って頂いた経済部新ビジネス支援課の皆さまにこの場を借りて、厚く御礼申し上げます。

 

<関連サイト>

 

青森市役所

http://www.city.aomori.aomori.jp/

 

小野寺晃彦ホームページ

https://www.a-onodera.jp/prf

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