数年後には八甲田山の風景が一変してしまうかもしれない~ 八甲田山にて青森県内広範囲での風力発電計画が持ち上がり、大変な状況になっているのに青森県民はまったく知らないってどういうこと?

最終更新日:2022年9月23日

SDGSとか、クリーンエネルギーだから風力発電や太陽光発電はいいものだと勘違いしている人が多いですが、今、全世界で大問題になっていますし、日本全国でもトラブルが多発しています。

 

そんな中で青森にもかつてない規模の自然破壊につながる風力発電計画が持ち上がっています。

 

私は青森が大好きな青森フリークですが、これを見て、背中が寒くなるぐらいショックを受けました。青森に故郷を持つ人であれば、全員激怒するレベルの計画だと思いますが、周りの青森友人に聞くと全く知らないとのこと。

 

これはかなり危ないなと思い、その情報を正確に伝えてくれる川崎さんご夫妻にお話を伺うことにしました。

 

ぜひ、記事をしっかりと読んで頂き、ご判断いただきたいと思います。

 

後藤伍長像のところからはこんな風に景色が見える計画とのこと。八甲田の景観は全く魅力ないものに変わるということ。

自己紹介をお願いします

私の生まれは八戸で、9歳からは神奈川県で生活をしていました。八甲田が縁で、青森に移住してきて16年になります。妻は八甲田で3歳からスキーをし、選手時代には世界各地の山々に遠征しながら八甲田と共に育ちました。今は田代の雄大な自然と共に生きていきたく思い、土地を購入して自分たちの手で家を作る準備を進めています。

 

川崎さんです。今回は似顔絵で登場して頂きました。

 

特に、田代の開拓地の環境は一般の方が知らない景色や環境があります。皆さんが知らない八甲田を一年を通して伝えるベースを作りたいと動いているところです。

今回の風力発電の情報はいつお知りになられましたか? 

去年の6月くらいですね。正式には916日のアセスメントが出た時点なのですが、告知の記事も新聞に小さく載った程度なので、気づかない市民の方が多かったと思います。

 

私たちが6月に知ったきっかけは、事業者が6月頃に風力発電をやりたいと話をしに来たことを茶屋の方から聞いたからです。茶屋の方達は、「八幡岳風力のやり方で青森市民は風力発電にアレルギーを持っているから、そんな計画は受け入れられない」と伝えたそうなので、その計画自体、起こらないだろうという茶屋の方からの話でした。

 

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川崎さんの奥さま。八甲田のガイドをされており、八甲田を知り尽くしている方です。

 

それから、しばらく音沙汰がなかったのですが、計画自体が進んでいるという噂を聞いたのが9月でした。アセスメント制度の中の環境影響評価配慮書を公表してから1ヶ月の縦覧があるのですが、その最終日にやっとかぎつけ、私ともう一人の代表と急いで意見書を書くため、市民センターへ向かうこととしました。

 

本来であれば、もう少し早く知って皆さんに周知活動ができればいろいろな意見を事業者へ出すことが出来たのですが、今回は最初の発見が遅れたので、実際に意見書が出されたのは数件だったそうです。周知されていないのだから意見が出ないのは当然です。

 

これはかなりやばいことになるかもと感じられたのはいつからですか?

そこから色々と調べました。今のみちのくの計画規模は、本当にあり得ないというか、前代未聞の規模だとすぐにわかりました。しかし、景観や経済の問題だけでは中止にならないというのが現実的なので、そこをどう阻止するべきかなどたくさんの問題が山積していることを感じました。

 

市民も原子力関係については思いがありますが、自然エネルギーに関しては「良いじゃないか」という意見もあります。ただ、風力のことを知っていくと良い面だけではなく、そうではない側面が数多くあることがわかりました。

 

問題点を教えてください

広範囲にわたって配置することになり、尾根の長さだけで見ると南側と北側エリアを合わせると100kmにも及びます。そのうち、70kmが国有林エリアです。国有林のほぼ全てが保安林ですが、保安林は役目を持っています。しかし、それを解除するのは手続きだけで済んでしまうというのが県の回答で、その点からも守ることは簡単ではないですね。

 

環境省からも国立公園内の配置には配慮するように、という意見書が出ています。私たちが事業者と直接、意見交換をした時に国立公園の中には配置をしない方向だという提案がされました。

 

その事業者というのは、(株)ユーラスエナジーホールディングス社という東京の会社で、豊田通商が100%出資しています。7月いっぱいまでは東京電力が3割株を持っていましたが、8月から豊田通商の完全子会社となりました。

 

トヨタは今、水素自動車を出していますが、今回の計画はそこにもつながってきます。水素を作るために電気が必要であり、その電気が化石燃料で作られたもので水素を作っていては意味がないので、そういう意味でも、再生可能エネルギーで作った電気を使うというシナリオがあるようです。先日の会員制の雑誌では、トヨタが風力で環境破壊を続けているということが大々的に記事になりました。

 

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FIT制度というのは、再エネ電力を固定価格で20年間買い取りますという制度です。しかしそのFIT認定IDは事業者間の転売も可能です。外資に売られる場合も考えられますね。ちなみに、現行でも譲渡ができるので、太陽光ではそれが頻繁に行われています。最初に契約した会社とは違っているので、問題が起きたとしても最早、相手を追えない状況になっているのです。既に、日本の切り売りが始まっていて、この計画もいずれそうなってしまう可能性が高いと考えられます。

 

また、計画自体が、国立公園森林区域にあたることも問題だと思っています。保安林にあたることもそうですね。これまでは、水源涵養や土砂流出、崩壊などのためにあるブナ林など、森林が持つべき機能を維持していくために林野庁が保安林の管理をしてきました。

 

今回の再生エネルギーに関しても林野庁は基本、安易に解除していないのですが、実は、菅総理時代に再エネ規制改革タスクフォースが立ち上がり、再エネ導入を前提に全ての制度を緩和させて事業ありきで進めるという命令が各省庁になされました。

 

今回、みちのく計画で風力の為に大規模な保安林解除がされてしまえば、今後全国的に森林の伐採や破壊が加速してしまう悪い意味の凡例になってしましいます。全国の自然保護団体も、今回の事例は非常に重要だということで、注視されていますね。

 

このような問題点に関して、企業側は答えてくれているのでしょうか

環境アセスメントについては、青森市を含む6市町で風力発電をやりたいと環境影響評価計画段階配慮書にて公表されました。計画段階の為はっきりとした概略説明は出ておらず、県知事も環境省もこの計画自体に強い意見を伝えられていません。

 

事業者は今後の予定として、今年の10月または11月に事業者が環境影響評価方法書を公表したいようです。ここには、環境に与える影響を評価する方法、つまり、環境、災害面、動植物に対しての影響をどういう調査方法で行うかなどが示される予定です。

 

本来なら、これに、この場所にこういう風力発電を何基立てるという概略設計が示されるべきなのですが、事業者との話の中では、概略設計を示さないとのことです。示さないということは、配慮書の時と同様に県なども明確な意見を話すことができません。

 

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それでも制度自体はどんどん進んでいきますので、そこがとても問題だと思っています。最後の段階である、環境影響評価評価書に進むと、県の意見をもう伝える場はありません。どうなったとしてもそこから県がどうこう言える状況はないのです。

 

アセスメントも事業者自身が行います。方法を決めるのも建てたい側ですし、それを調査する会社も事業者が選び、結果を判断するのも事業者です。これはただのプロセスに過ぎないので、この手続きを踏めば成立してしまいます。県や市側もなかなか概略設計が出ないと意見が言えないという受け身の姿勢が続いているのが現状です。

 

宮城県の蔵王では、計画がストップしましたね

計画には、地域住民の合意形成が必要なのですが、蔵王の場合は配慮書が出た時点で反対団体が全国から意見書を取りまとめていました。蔵王も国定公園が計画地になっていたので、1ヶ月くらいで意見の収集をして関係市町村長に提出され、川崎町長がはっきりと反対を表明した上で、宮城県知事に意見を出していました。

 

それに続き、隣の自治体の長も反対と明確に話していました。そして、それを受けた県知事も反対を表明していたのが大きいですね。知事のはっきりとした反対表明が一番強く、それに住民の意見書が加わるという流れが早期にできたことで地域全体の意見が、中止につながったと思います。

 

青森の場合は反対の意見がどこからもはっきりと出ておらず、知事が「私見」として反対の表明をしてはいますが、あくまで「私見」という前置きをしています。市長に関しては、まだ何も表明していませんし、一度もこの問題に触れていません。これは県民性もあると感じていますし、知事や市長が反対したことに関しては市民が反対すると思いますが、なかなか市民にまで広がっていないというのが現状ですね。

青森の人の健康に大きく影響すると思うのですが、その点についてもお話しいただけますか?(特に低周波について)

最近は、被害を訴える方が増えてきたということは話題になっています。海外の事例だと、ドイツでは低周波により健康被害が問題になってきていますし、それを訴える有識者も出てきています。それで風車が撤去になるケースもありますね。

 

しかし、個人差がある症状なので、日本の場合は医者にかかったとしても鬱症状として片付けられてしまうことがあるそうです。環境省も低周波と健康被害の因果関係が認められないとしていますので、事業者もそこを盾にしています。

 

意外と青森の方が知らなくて、「風力発電、クリーンエネルギーでいいんじゃないの?」とのんびり構えられている方が多いのですが、なぜでしょうか?

極端な発想だと思いますが今回のような再エネ乱開発反対の活動をしている=原子力に賛成だと捉えられているようです。(そんな単純な問題ではないのに「二元論」に持ち込まれる)

 

そこに、どういう問題があるのか自分から突っ込んで勉強する方は少ないので、原子力は悪で再生可能エネルギーは善だというイメージでしか見てないのだと思います。

 

他県の例を見ても残念ながらこんなにも無関心な県はありません。

 

鰺ヶ沢では海の風力もやろうとしていますね

こちらは環境省が提言しているゾーニング事業として、青森県が参加した上で進めています。青森県がこの海域なら良いと示した上で行なっているのです。

 

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そういう視点を陸上風力にも使えないのかというのは県に聞いてはみたのですが、洋上でやる場合は前例がないため、ゾーニング事業に参加しているというのが県の見解です。今回の八甲田に関しては、山岳地帯のほぼ100%森林区域で行う大規模計画としては初めてで前例もありません。なので洋上と同じように県が守るべき場所を示した上で事業者を選定すべきだと思っています。

防衛的にも問題があると聞きましたが、その点は確認されていますでしょうか?

直接、レーダーに影響があるという話ですが、今回の計画に影響しているかどうかということは聞こえていないですし、私たちもそこはまだ調べていません。ただ、防衛省としては、はっきり反対してしまうと、ここにレーダーがあると教えてしまうことにもなるので反対はしにくいようです。青森の立地は北朝鮮も近いですし、それは無視することはできないと思うので問題にはなっていないのだと思います。

今月の議会で決まってしまうと危ないと聞いたのですが、それは本当でしょうか?

今、自民党から今回の計画に関して環境に配慮するように求める意見書が出されました。同時に野党側からは、今回の計画を白紙撤回、中止を求める決議案が出ました。今回、自民党が出した配慮案が可決されると、結局は環境に配慮すればこの事業を進められるということになります。

 

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それを市は盾に使ってくると思うのですが、今回、反対の決議案が出されたことで、一定数以上反対を持っている人がいるという意思表示にもなっているので、今回の議会だけで決まってしまうということはないはずです。仮に、決まったとしても、きちんと配慮しているのかという指摘ができるので、私たちとしても意見は伝えていきたいと思っています。

県民だけが被害を被るような今回の件について、今後どのように情報を拡散していく予定ですか?

今後も事業者に全面撤回を求めていきますし、県にもそうなるように動いて欲しいという思いは持っています。協議の中で落とし所はついてくるものですし、そこを早期の段階でこちらから提案することも違うと思います。

 

環境影響評価準備書の後半では、実質的に本契約を自治体と結んでいるので、活動の焦点は環境影響評価方法書になりますね。今回、環境影響評価方法書に関して、知事意見が提出されますが、その意見と同じくらい市民の動きを大きく表に出すことが必要だと思っています。

最後に伝えることがあれば宜しくお願い致します

制度自体が建てるありきなので、法律的な話になると、なかなか景観だけや経済では解決することができません。そこを今後は、どういう協議をしていかないといけないのかが問題です。

 

市民県民の方は既に決まった話だと諦めている人も沢山います。みちのく風力発電計画を情報誌やサイトに取り上げてもらうことを通じ、市民県民の意見で計画を変えられることを伝え、理解してもらいたいですね。先ずは地域の声が一番重要で前提にあること。そういう面で医療関係の方々とのつながりを使いながら、拡散し、声を出していただきたいと思います。

まとめ

今回の風力発電は国のエネルギー施策推進、原子力を使えない背景、大手企業の思惑などが絡んでいて、結構、ごり押しで計画を進めてきそうな感じが見受けられます。

 

こういうケースの場合は当事者である青森の住民が声を上げないとそのまま進んでしまうことになります。

 

県民に対しては経済的にもプラスの影響は微々たるもので、かつ貴重な自然を失ってしまうという大きな代償を払うことになると予測されます。

 

皆さんの考えとアクションが青森の自然環境を守り、故郷をキープできる原動力になるはずです。ちゃんとした議論もなく、進んでいくことだけは避けたいので、署名活動にご協力いただけると幸いです。

 

関連サイト

 

プロテクト八甲田~八甲田の自然を後世に~

https://tinyurl.com/3h5nn9kx

 

オンライン署名

https://tinyurl.com/re3e5s38

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