八戸市立市民病院救急救命センター 野田頭達也先生インタビュー

最終更新日:2020年7月22日
八戸市民病院救命救急センター
センター長
野田頭 達也
先生
野田頭 達也 (のだがしら たつや)
出 身 地 八戸市
所 属 科 救命救急センター
出身大学(教室) 自治医科大学
卒 業 年 昭和63年
専門分野 救急外科、外科

このたびはTBSの情熱大陸やNHKのプロフェショナルで紹介された八戸市立市民病院救命救急センターのセンター長である野田頭先生にインタビューをさせて頂くことが出来ました。

 

日本でも有数の救命救急センターである当施設ですが、救命率を上げるための工夫を日夜重ねており、ドクターヘリとドクターカーの同時出動(サンダーバード作戦)については説明の必要もないぐらい有名な話です。

 

青森にこのような素晴らしい仕組みと施設があるのに取材をしない手はありません。青森ドクターズネットとしてしっかりとお話を伺いました。

 

ぜひご覧ください。

目次

ドクターになられたきっかけについて教えてください。 

特にかっこいい理由はないのですが、高校の先輩が自治医科大学の医学部に進学し、地域医療やへき地医療に取り組むことを知って関心を持ったのが最初のきっかけです。

 

やはり、医師の少ないところへ行き、頑張るということが性に合っていると感じてからは、本格的に医師の道へ進むもうと思いました。ひょっとすると、もっと幼いころから医師になりたいという気持ちはあったのかもしれませんが、具体的に考え出したのは高校に入ってからですね。

外科を選んだ理由をお聞かせください。 

今は救急をしていますが、元々、医師の少ないところである程度の治療を完結させたいという思いを持っていたので、地域にいる人が地域で良い医療を受けられるように幅広い知識と技術を身につけたいと考えていました。

 

その中で、救急は欠かすことのできない診療分野だったので、そういうことを意識しながら研修を進めて今に至っています。

 

 

八戸市民病院の救命救急センターは常に進化しているというイメージが強いのですが、これは設立当初からの思いが継続しているからなのでしょうか。 

今院長が、ここの救命救急センターを一人で立ち上げる中で色々な困難があったと思いますが、八戸にもこういう救急があるということを知ってもらうために多くの取り組みを行った結果、徐々に知られるようになってきました。

 

それらの思いが、赴任した若い医師たちに受け入れられ、脈々と今に至るまで続いてきているのだと思います。

現場までドクターカーを先に走らせておき、後からドクターヘリで駆けつけるサンダーバード作戦や、現場で手術できるよう手術室とドクターカーをくっつけた移動緊急手術室を導入するなどの試みをされていますが、最新の医療機器を揃えるために相当なご苦労があったのではないでしょうか。 

ドクターカーは、ドクターヘリに続き2010年から運用を始めていますが、どちらも当時としては導入している病院が少なかったですね。そもそも、ドクターカーはドクターヘリを補完する意味合いがあったのですが、実際にどのように運用するのかという苦労はありました。

 

そして、いわゆるサンダーバード作戦については、それを編み出したというよりも必要に迫られて実現したという形になります。

 

移動緊急手術室に関しては、やはり患者さんは50キロ圏内と広い範囲にいるわけですから、当然、病院に来るまで時間がかかります。ドクターヘリだけではうまくいかない事例をいかに変えていくかという発想で実現しました。

予算を確保することは相当、大変だったのではないでしょうか。 

決して、お金をかけているわけではなく、移動緊急手術室についても八戸工業大学と共同で開発をし、提供していただいている部分があります。ドクターカーについても、日頃、色々な活動をしているので共感や賛同を受けて、協力いただいています。

 

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救命救急の場合は、一分一秒が命取りになるかと思いますが、日々の活動や研修の中で経験を積まれているのでしょうか。

ドクターカーやドクターヘリの出動に関しては、現場での滞在時間を意識しています。現場での活動時間をなるべく短縮し、尚且つ、必要な処理は漏れなく行って病院に運ぶという体制は、カンファレンスなどを通じて、その都度話し合うようにしています。

消防本部との連携はどのようにされているのでしょうか。 

消防本部が近くにあるので、何か困ったことがあれば頻繁にやり取りをしています。近くにあるので我々も非常に助かっていますね。

 

地域分娩貢献率が日本一だと伺っていますが、こちらについては何か取り組みを行っているのでしょうか。

救命救急センターが直接、産科医療に関わることはないのですが、産科領域に関して緊急のドクターカー出動要請が入る場合もありますので、スタッフは産科講習を受講するようにしています。

 

救命救急のスタッフが、病院外で産科救急に協力できる体制は整えるようにしていますね。

多くの若いドクターがこちらでの研修を希望されていますが、日常業務と並行して受け入れができている秘訣は何でしょうか。 

八戸市民病院は救急車の受け入れが非常に多く、豊富な事例を経験できるのが魅力です。また、滅多に経験できないような稀な症例もありますし、医療技術も習得しやすい環境です。これらが、若いドクターたちにとって実践力が身につけられる病院として評価されているのだと思います。

 

とは言え、何もしなければドクターは来ませんので、色々な病院の先生が集まるような場で自分の医療施設をアピールするなどの取り組みは行っています。

 

指導に関しては、私一人で行っているわけではなく、受け入れに関しては全員で協力していますし、むしろ日常の医療を楽しんでやっていると思います。

 

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ハードな現場なので身体的または精神的負担が大きいと思いますが、どのように上手く解消されているのでしょうか。

昨年から働き方改革ということで、勤務体制の見直しを行うなど医師の負担軽減に努めています。大変な部分はありますが、それでも人員が増えるなど良い方向に向かっているのではないでしょうか。

 

私個人としてはそれほど楽しみもないのですが、休みの時にはしっかりと休むようにしています。今は出歩くことが難しいですが、家の中で好きなことをして休養を十分に取るということがストレス解消になっています。

青森県は生活習慣を変えられずに、救急搬送を経験されても再発するケースが多いと聞いていますが、先生はどのように思われていらっしゃいますか。 

青森県は短命県と言われるだけあって、若い人でもすごく重症のケースも多いですし、健康意識の低い人が相当多いですね。我々ができることといえば、そういう方達をまずはしっかりと治してあげること。そして、少しでも健康を意識してもらいたいという思いを持って患者さんの指導にもあたっています。

 

意識を変えていくことは難しいと思いますが、地域の医療機関と連携しながら子供の頃から意識を持ってもらえるようになって欲しいと考えています。

今回の新型コロナウイルスでは、最後の砦としてかなりご苦労されたのではないでしょうか。

当院も感染した患者さんが入院しましたが、まずは自分自身の感染予防、そして患者さんの安全を考えていかなくてはいけないので、色々と関係部署と連絡調整をしながら診療にあたっていました。最初は手探り状態でしたが、徐々に安心できるような診療体制を整えることができたと思います。

 

今は落ち着いていますが、いつ第二波がくるかわからないので、緊張感を継続させながら過ごしている状況です。

今後のビジョンについてお聞かせください。 

まずは、現在の対応を維持していくことが当面の大きな目標ではありますが、そのためには救命救急センターとしての魅力を発信し続けていかなくてはいけないと考えています。

 

そして、少しずつ人員を確保し、しっかりとした医療技術の確率に励んでいきたいですね。

まとめ

お話を伺いながら、言葉を選びながらとつとつとお話頂く野田頭先生に深い安心感を感じるインタビューとなりました。

 

青森県は医療体制的にはあまり充実しているとはいいがたく、特にへき地で事故や大けが、重症患者が出た場合に不利な地域だと思いますが、八戸市立市民病院救命救急センターが出来たお陰で格段の救命率を誇っています。

 

今回はコロナのこともあり、オンラインの取材となりましたが、また、コロナが落ち着いて、病院側の受け入れ態勢が出来た段階で現地取材もさせて頂きたいと思っております。

 

改めて救急救命の最前線をレポートしてみたいと思います。

 

また、大変お忙しい中、ご対応頂いた管理課の皆さま、野田頭先生にこの場をお借りして厚く御礼申し上げます。

 

<関連サイト>

 

八戸市立市民病院 救急救命センター

https://www.hospital.hachinohe.aomori.jp/introduction/kyuumeikyuukyuu

 

プロフェショナル~仕事の流儀

https://www.nhk.or.jp/professional/2019/0409/index.html

 

情熱大陸

https://www.mbs.jp/jounetsu/2018/02_11.shtml

 

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