青森市在住。
そば処妙弘庵店長として、青森発のだしソムリエ1級、認定講師に。
その後、自身の活動をさらに広めるため「Dashi-factory雅」を設立、 さらに「あおもりだしstyle」を設立し、地元のだしソムリエの活動をサポート。
Dashi-factory雅
先日、青森県のスタートアップ企業を応援するためのイベント「あお☆スタピッチ交流会ファイナルセレクション2020」が行われました。
https://www.city.aomori.aomori.jp/koho-kocho/shiseijouhou/kouhou/press/r0210/15-03.html
なんと青森ドクターズネットを運営する弊社「ミライテコ」もファイナリストとしてプレゼンをさせて頂きました。
そして、他に5組のプレゼンターがおられたのですが、その中でもひときわ目立つ和装の美女がいたので、早速ご挨拶をさせて頂きました。その方が本日の奥村さんです。
だし活で様々な食生活改善に取り組まれているとのことで、自分の発表より興味津々で聞いておりました。
そして、そこで早速取材依頼をさせて頂き、ご快諾を頂いたわけです。
それではインタビューの内容をどうぞ!
目次
- なぜ、だしソムリエになろうと思われたのでしょうか。
- 青森県では奥村さんが「だしソムリエ第一号」だとお伺いしております。
- だしの定義について教えてください。
- だしソムリエ協会について教えてください。
- 青森のだし活はいつから始まったのでしょうか。
- うまみ成分を上手に活用すると、しょっぱいものが食べたくなる衝動を抑えられるのでしょうか。
- ご自身のお店を2018年に作られたそうですが、そのきっかけなど教えてください。
- こちらのお店は、貸し切りなどできるのでしょうか。
- このお仕事をされていて、一番印象に残っていることを教えてください。
- だしについて、思うところなどあればお聞かせください。
- 学生さんに向けて、実習されることもあるのでしょうか。
- だしは簡易式のものも多いのですが、昆布や鰹節から取るのはかなりハードルが高そうですね。
- 美容や健康のためにされていることはありますか?
- 青森県は蕎麦屋が多いですよね。
- 今後のビジョンについてお聞かせください。
なぜ、だしソムリエになろうと思われたのでしょうか。
両親が日本蕎麦店をやっておりました。
特別、どこか修行へ行ったり調理の学校へ行ったりしたことはないのですが、何か付加価値をつけないと思った時にたまたま見つけたのがだしソムリエでした。
ちょうど、野菜ソムリエが流行っている時期だったので、最初は野菜ソムリエを取ろうかと思っていたのですが、仕事の中で一番関わりのある資格を取った方がいいのではないかとアドバイスされ、私にとってだしは欠かせないものだったこともあり受講してみようかなという安易な気持ちから始まりました。
青森県では奥村さんが「だしソムリエ第一号」だとお伺いしております。
検索した頃、ちょうど2級講座を協会で始める予定でしたので、それを青森県内では最初に取得しました。
受講時に聞いてみたのですが、やはり首都圏の方が多く地方から来る人がいないとのことでしたし、青森からもいなかったそうなので、それであれば第一号でやっていきたいという気持ちが強かったですね。
また、今までだしに関わった仕事をしていたにも関わらず、わからないことも多くだしは奥深いと感じました。
蕎麦屋なのでそばのだしの取り方はわかるのですが、他はわからないですし、今は学校の調理実習でもだしを取ることは少ないようです。調理師学校でも、和食で簡単なだしは取りますが、手間のかかる中華などのだしは粉末の顆粒で終わってしまうこともあると聞きました。一人でも多くの人にだしの良さ、食の中の土台としてのだしを知ってもらいたいと思って活動し始めました。
だしの定義について教えてください。
同じ和食でも、日本料理に使うだしと蕎麦屋のだしは違いますし、ラーメン屋さんのだしも違ってきます。業種によって本当に違いますね。
定義としてはソムリエ協会の定義にはなるのですが、鰹節や昆布などの定番の乾物のほか、魚介や野菜、肉類など全ての食材からだしが取れるということにはなっています。また、私たちだしソムリエは、味付けする前のものをだしと呼んでいます。いわゆる、ベースになるものですね。
今はだしブームなので、市販の商品もたくさん売られているのですが、その中でも味付けされてしまっているものは関連商品という形であり、純粋に素材の旨味を引き出したものをだしとして使っています。
だしソムリエ協会について教えてください。
東京と名古屋に事務局があり、日本で唯一だしに特化して、だしの情報発信や人材育成を行っているのがだしソムリエ協会です。
私は日本で最初に認定講師となりました。ちょうどその頃に青森でだし活が始まっていたということもあり、様々な普及や啓発活動をさせていただきました。
青森のだし活はいつから始まったのでしょうか。
青森県は短命県ということもあり、だしのうまみを使って美味しく減塩しましょうというのが始まりですね。平成28年からのスタートとなります。
塩分をあまり摂らなさすぎるのも良くないのですが、青森県民は他県に比べ塩分摂取量が多めの傾向です。
県民の健康寿命の延伸に向けて県産のだしなどを活用し美味しく減塩を推進する「だし活!健活!減塩推進事業を立ち上がりました。
食生活改善推進委員の方々や、地元スーパーや量販店とタッグを組んで、県の推奨商品「できるだし」でだしを簡単に活用してもらえるようイベントやレシピ開発で普及させる活動もしていました。
うまみ成分を上手に活用すると、しょっぱいものが食べたくなる衝動を抑えられるのでしょうか。
そうですね。ただ、だしに多く含まれるうまみは穏やかな味わいなので、しょっぱさや甘さのようにハッキリしている味ではありません。そのため、しょっぱ口の青森県民には少し物足りなく感じたと思います。
減塩というと美味しくないイメージを持たれることも多く、そこは活動の中で苦しい部分でもありましたね。
講座などで「うまみを活用すると、これだけ塩分を抑えられます」とお話しすることもありますし、実際に調理実習でだしがあるものとないもの、こんなに違うということを体験していただくこともありますが、最初のうちは伝わりにくく苦労しました。今は、当時から比べると大分変わり多くの方がだしに興味を持ってくれるようになりました。
ご自身のお店を2018年に作られたそうですが、そのきっかけなど教えてください。
両親の後を継いで日本蕎麦屋をやってはいましたが、その当時はどちらかというと女性がゆっくりできるような形の蕎麦屋ではなく、どちらかというとお客さんを早く回転させるような典型的な蕎麦屋のスタイルでした。
私は元々、そばが好きですが、女性が一人で蕎麦屋に入るのは勇気がいるのかなと思っていましたので、女性でもゆっくりしてもらえる場所を提供したいと考えていました。
また、活動を始めてから様々な生産者さんとお会いすることができたので、生産者さんが見える飲食店をやりたいと思っていたこともありますね。
商売なので全て取り入れることは難しいのですが、ポイントで「今日は○○さんが生産したネギ」ですよなど生産者さんが見えるようなスタイルを取りたいと考えていました。
そう言ったことを実現させるためには、今のような形態が良いのかなと思い、蕎麦カフェという形に落ち着きました。
こちらのお店は、貸し切りなどできるのでしょうか。
これまでも、ご予約いただいて食のイベントと称し、農家さんのグループとコラボした創作料理などを提供する場として活用いただいたこともあります。
ちょっとした調理実習などで実習室を借りることもあるのですが、例えば、動画の撮影だけしたいけれども実習室を借りるまでもないという場合は、うちの厨房を使ってもらうなどフルで活用してもらいたいという思いで店舗を設計しています。
皆さん今は、道の駅など自分で作られた惣菜などを出されているのをよく見ますし購入もします。惣菜の販売や加工食品の販売をしてみたいという方の相談を聞くともありその中で大きな壁となるのが営業許可です。ご自宅で営業許可を取るのはハードルが高い、でも許可のないものを販売することはできない。みんなが利用できる加工施設があればいいのではないか。郷土料理を受け継いでいくにもそういった集いの場が必要なのではないかと考えています。
私は元々、飲食業だったので加工食品を作りたいと考えたときに比較的入りやすい分野ではありますが、農家さんから相談を受けることもあるので、それであれば衛生管理もされている場所で作れるような状態を目指したいですよね。
このお仕事をされていて、一番印象に残っていることを教えてください。
自然栽培農家さんとの出会いです。それまではお勤めされていた方でしたが、自身のアレルギーから自然栽培を始め就農された方です。
その時初めて自然栽培というものを知りました。これまで当たり前のように手にしていた食材は生産者さんの想いや苦労がいっぱい詰まったものだと気づきました。生産者さんのおかげで商売ができていることに感謝の気持ちでいっぱいになりました。
その農家さんの就農一年目はそこの畑で一緒に蕎麦を植えることにしました。私自身初めての農作業でした。その数年後、種が別な生産者さんに渡りご縁があり私のところへやってきました。
それがもっとも衝撃的な出来事でしたね。
詳細をお話しすると、数年前あるプレゼンでこの農家さんと一緒になり、それがビジネスをテーマにしたプレゼンだったのですが生産した食材の売り先を聞かれるだろうと。そして、その場にいた蕎麦屋の私に初対面でいきなり「あなたのところに、そばを卸すと話すので口裏を合わせて欲しい」と言われたのです。
あまりに突然のことで何を言っているのかわからなかったのですが、その時はうちで使いますとお答えしました。
休耕地で自然栽培を行うには安定して作物ができるまで時間がかかるそうです。そこで荒れ地でも栽培できる蕎麦を植えようと。ちょうど蕎麦屋がいた!と今では笑い話です。
後日、実際に二人で畑へ行って種をまいてみました。誰かから指導されたわけでもないので、見様見真似で始め手探りで始めた蕎麦栽培はその年のイベントでお披露目しました。
2年ほど蕎麦を栽培し土がよくなったため今では他の作物も植えられるようになりアピオスなどを植えているそうです。そのまま蕎麦は途絶えてしまったのだろうと思っていたら、その種を他の人が大きくつないでくれて、今は世田谷の方で売られているらしいのです。
それがもっとも印象に残っていますね。
この仕事をしていろんな農家さんと知り合いになることができたので、私の中ではこの商品はこの農家さんといったように食材の指定をしたりしています。本当は、もっと私に力があってそれを大きく広げられれば良いのでしょうが、まだ力不足なのでこれから力をつけて広げていけたらと思っています。
だしについて、思うところなどあればお聞かせください。
一言で言えば奥が深いですよね。組み合わせは無限ですし、季節によっても変わってきます。ちょっとした配合の割合でも変化があるので、本当に科学的だと思います。
私はレシピを作ることが仕事なので、料理ができない学生さんでもできるような形でレシピを作って欲しいという依頼が結構あります。
私は聞かれると全て教えるタイプなので、そのままレシピにも反映させるのですが、一緒に並んでやっていても同じようにいかず個性が出るので面白いですよね。それが楽しさでもあります。
学生さんに向けて、実習されることもあるのでしょうか。
ちょうど、自炊を始めるのが大学生の頃なので、大学生向けの自炊をテーマにした調理実習もしていますし、小さい頃からだしに触れさせようと小学生向けの講座も行います。色々と見ていると、大学生でも20人中だしをとったことがあるのが2人くらいしかいないですね。お家でも、お母さんが粉を振っていたと話していますし。
小学生になると何にでも興味があるので、かえって小学生の方が手際が良いかもしれません。
だしは簡易式のものも多いのですが、昆布や鰹節から取るのはかなりハードルが高そうですね。
私はそういう形でだしを取ることに慣れてしまっているので、市販品を買うことはないのですが、ちょっとしたコツを覚えると全然難しいことはないです。
市販されているものはいろんなものを組み合わせて美味しくなっているので、普通の天然だしから取ったものよりも美味しいと感じることは確かに多いですよね。
美容や健康のためにされていることはありますか?
おそらく私の場合は、それが“そば”と“だし”だと思います。
ほぼ毎日、そばを食べていますし、そば湯はお茶代わりに飲みます。蕎麦屋ですのでだしの利いためんつゆも使いますしね。
2016年に血管年齢を調べる機会がたまたまあり、その時に実年齢よりもひと回り若い血管年齢でした。看護師さんもびっくりしていたのですが、おそらくそれが、そばとだしのおかげだったのだと思っています。
そのあと忙しいからと食生活が乱れてしまったのですが、そこから回復することがまだできていないので、不摂生ですぐに体の中や数値は崩れてしまうのだと実感しています。
風邪をひくことも少ないですし、いつかはそういった部分を数値化して、立証できれば良いなと考えています。
青森県は蕎麦屋が多いですよね。
私は自分の店で打ったそばも食べますが、休みの日はよそへ行ってもそばを食べています。
青森市内には関東よりのそば屋さんが多いのですが、少し郊外へ出ると、地方の田舎そばのような地方特有のそばがあって面白ですね。
蕎麦鑑定士という資格を取りに東京まで行ったことがあるのですが、ソバリエさんたちは私なんか足元に及ばないくらいでした。食べただけでどこの粉なのか分かりますし、皆さんそばが好きな方ばかりでしたね。
今後のビジョンについてお聞かせください。
着地点としては、青森の食材を含めたものを海外へ発信したいですね。
そこまでに至る間にもやりたいことはたくさんあって加工場のこともありますし、食に関わる仕事をされる方の人材育成についても携わっていきたいと思っています。
まとめ
奥村さんにお話を伺っていると、「そばとだしが大好きで突き詰めていきたい!多くの人に知ってもらいたい!」という気持ちが伝わってきます。
また、地元の農作物やお魚についてもほこりを持っておられ、もっとこの良さを理解してもらいたいという思いがあふれています。
自分でお店を持ちながら、そのお店を様々な地元の素材や人の紹介できる場として活用されているのはなかなか実現できることではないと思いますし、これからもどんどんと活動を広げていかれるのだろうなと感じました。
私自身も一度、お見せの方に伺って、美味しいお料理を楽しみたいと思っております。
奥村さん、お忙しい中、取材に応じて頂き、誠にありがとうございました。この場をお借りして厚く御礼申し上げます。
関連サイト
SOBA Cafe 雅
https://soba.dashi-miyabi.com/