白戸蓮(しろとれん)
学生団体 CoCo-Cam 代表
医Café SUP? 代表
弘前大学医学部医学科6年
青森県立八戸高等学校 出身
〜略歴〜
大学入学後、弘前医ゼミに参加する会(HIZSK)や医学部学生自治会での活動を通して、社会にモヤモヤを抱き始める。
2020年6月 社会起業家を志し、コラーニングスペースHLS弘前、ひろさきビジネス支援センターを頻繁に利用するようになる
2020年10月 紆余曲折を経て、「学生団体 CoCo-Cam」を設立
2021年1月 弘大じょっぱり起業家塾で「医カフェ」のビジネスプランが最優秀賞を受賞
2021年4月「医Café SUP?」を創業
今年4月に弘前で医学生によるコミュニティカフェがオープンしました。
食事を楽しみながら気軽に健康について話せる場をつくろうと、弘前大学医学部の学生が店に立ち、健康相談や学生の進路にも乗っているそうです。
今回、代表の白戸氏にインタビューすることが出来ました。なぜこのカフェが出来たのか、今後どのように進化していくのかなど、じっくりと伺ってまいりました。
ぜひご覧ください。
目次
- 医カフェを作られたきっかけについて教えてください。
- 高校生のキャリア支援は、参加される大学生の学部は医学部に限定されているのですか?
- このプロジェクトは白戸さんが声をあげて始めたのでしょうか。
- 組織としての意思決定はどのようにされていますか。
- カフェをオープンするにあたり、クラウドファンディングをされていましたが、資金の全てがそこでまかなえたのでしょうか。
- 医カフェをされてみて、反応はいかがでしょうか。
- 今後のビジョンについてお聞かせください。
- 青森ドクターズネットの読者へのメッセージはありますか。
- 卒業後、白戸さんが研修医になり医カフェが遠くなると、あまり関われなくなるのではないでしょうか。
- 他の大学生が同じようなプロジェクトに取り組みたい場合は、手法をお伝えることもあるのでしょうか。
医カフェを作られたきっかけについて教えてください。
私自身、学生生活を通して課題だと思ったことがいくつかあり、特に、医学部を目指す高校生のキャリア支援や地域に愛着を形成しにくいことを感じていました。
それらに関して、医師になってからも何かしらの形でアプローチはしようと思っているのですが、学生のうちにできること、学生だからこそできることはないだろうかと考えた時に、まず、学生が地域に出る場所を作るという意味で医カフェを開こうと思いました。
健康相談や医療に関わることをカジュアルに話せる空間を形成することで、僕たち学生としても地域の人と話すきっかけになりますし、地域の方々も病院に行くほどではないけれど、コーヒーを飲みながら、気軽に医学生と話せるというところに価値があるのではないかと。
高校生のキャリア支援に関しても、大学の進路を考える時には、なかなか生の大学生の意見を聞けることはないですし、大学に入ってからわかることも多くあります。
高校生が大学生活に関してざっくばらんに話せることができ、つながりがもてる場所も作れたら良いと思い、プロジェクトを進めてきました。
高校生のキャリア支援は、参加される大学生の学部は医学部に限定されているのですか?
医学部生ということで、医学部を目指す高校生のキャリア支援が主になります。
ただ、社会起業という形でプロジェクトを進めてきたので、企業や経営などビジネスを学ぶ場、つまり、弘前大学でいうと人文社会科学部の企業戦略コースのような学部を目指す高校生のキャリア支援もしています。
そこからさらに発展して、医学生の家庭教師は需要があります。塾として形にしてはいませんが、医カフェで勉強を教えることもしています。
将来的には、信頼関係を築いた上で、個別指導など塾の教育の事業もスタートさせていければと思っているところです。
このプロジェクトは白戸さんが声をあげて始めたのでしょうか。
そうですね。私が始めたプロジェクトですが、具体的に何をやるのかは今の5人で決めました。私の中では、高校生のキャリア支援や学生が地域に出る機会がないことを問題意識として捉えており、そこをさらに5人でディスカッションして、具体的にどういう形にしていくのか考えました。
組織としての意思決定はどのようにされていますか。
まず、私たち5人はもともと弘前大学にある学習サークルに入っていました。学校では学べないことを学ぼうということで、社会的な視点から貧困や医師の働き方など多岐に渡るテーマについてディスカッションをし、発表をしていたメンバーです。
そのため、私自身が問題意識をもって起業しようと考えた時には、既に目星がついており、今のメンバー達に声をかけて、実際に活動することになりました。
意思決定については、代表は私ですが、共同経営という形をとっています。つまり、医カフェの最高決定は、5人でのミーティングの場になります。
そうは言っても、細々した作業が本当に多いので、代表である私が責任持ちながら、各メンバーに任せている部分も多くあります。
例えば、会計に関してはこのメンバー、マーケティングに関してはこのメンバーという形で、割り振って進めてきました。
カフェをオープンするにあたり、クラウドファンディングをされていましたが、資金の全てがそこでまかなえたのでしょうか。
クラウドファンディングの他、コンペのような場で話す機会があり、そこから個人的支援をしてくださった方もいます。とは言え、そのほとんどがクラウドファンディングではありますね。
医カフェをされてみて、反応はいかがでしょうか。
これはやってみないと分からなかったところではありますが、健康相談が本当に月に数件しかなかったですね。客層としては、半分は学生、残りが大人です。
学生に関しては、高校生が話を聞きに来ることもありますし、横のつながりを求める大学生もいます。医学部以外の学生も多いですし、学生起業に興味があり、アクティブな学生との出会いを求めている方もいます。
大人に関しては、健康相談は一部です。私たちを応援してくれる人もいますが、その多くは、私たちと同じように地域で取り組みをされており、皆さんの出会いや交流の場となっています。
私たちとしては、医カフェを始めることで支援ができると思っていましたが、蓋を開けてみると、支援する側が集まったというのが現状です。
ざっくり言えば、健康や医療に対する社会課題については、まだアプローチできておらず、同じような悩みを抱えた方々と一緒に、どうしたら良いかと話し合いながら進めています。
経営については、雇用という形を取っていないので、人件費はかかっていません。現在は、初期費用を払っているところです。
また、コロナ禍ということもあり、最初の事業計画通りに進んでいないことも影響し、収支はトントンという形ですね。ただ、人件費は払っていない状態での収支なので、このままでは良くないと私たちも思っています。
コロナもいつ終わりを迎えるのか分かりませんので、塾事業など月々、安定したお金が入ってくるような流れをトントンのうちに作っていきたいというところではあります。
給与として少しでもお金をもらうことで、責任感やプロフェッショナリズムの醸成になると考えているので、今後は人件費も払っていけるようになればと思っています。
それらも含めて、学ぶことはたくさんありますし、価値がありますよね。
今後のビジョンについてお聞かせください。
教育事業に取り組んでいこうと思っています。具体的には、個別指導の塾などですね。
医カフェの中で信頼関係を作り、オンラインで行うことができれば場所も必要ないですし、感染の心配もありません。その他、メンター制も考えています。勉強だけではなく、勉強の仕方を教えるような教育事業に展開できたら良いですね。
また、性教育にも力を入れようと思っています。弘前大学で性教育に関する活動を行おうとされている先生とともに、大学生だからこそできる性教育を提供したいですね。
高校生の授業でも限界がありますので、年が近く、専門性もある程度、担保されている私たちが何かできないかと模索しているところです。
青森ドクターズネットの読者へのメッセージはありますか。
活動を通じて色々な話をしていく中で、寄付も含めて協力していただけることがあればお願いしたいと思っていますが、まずは医カフェに来て欲しいですね。
今までは、健康相談を前面に打ち出していたのですが、今後は交流の場、コミュニティスペースとしてのカフェという側面も押し出して、そこに関心持っていただければと考えています。
医カフェへ来て一番驚かれるのが、高校生からお年寄りまでいるという空間です。高校生や大学生もいて、地域のアクティブな方やお年寄りもいる。そして、尚且つ、横のつながりもあるという空間だと、新しい発想があると思うので、ぜひ私たちのところに話に来てもらえればと思います。
卒業後、白戸さんが研修医になり医カフェが遠くなると、あまり関われなくなるのではないでしょうか。
卒業後は実働的な部分は関わらず、9、10月を目処に退き、その後はNPO法人にしようと考えています。私自身は理事という形を取り、今後も関わっていければと思っています。
現在、新メンバーを募集しているところですが、14名の申し込みがありました。その半分が医学生ではありませんが、医カフェのコンセプトを果たすには、医学生以外の学生もいた方が良いとの思いもあり、引き継ぎを行っているところです。
私自身は、弘前市内の病院でマッチングや面接をしているので、弘前にはおそらくいると思います。医カフェを通じて、つながりができ、医師になってからやりたいことがどんどん見つかったので、それらを実現していければと考えています。
他の大学生が同じようなプロジェクトに取り組みたい場合は、手法をお伝えることもあるのでしょうか。
そうですね。どんどん広がって、子ども食堂のようになって欲しいと思っています。子ども食堂は、どこが発祥となって広まったのかわからないのですが、それと同じく概念として広まっていけば良いですね。
医カフェは、私たちが発祥だと思うので、何かしら繋いでいけたらと思っています。実は先日、横浜市立大学の医学部生から講演依頼があり、オンラインで講演をしたところです。
講演の中で、横浜にある進学校で医学部を目指す高校生たちを交えたディスカッションも行いました。
横浜市立大学と弘前大学の医学部一年生を交えながら、「もし、自分達が医カフェを作るとしたら、どんな風にしたいか。」「横浜で医カフェを作るとしたら、どんな課題解決ができるだろうか。」といった内容です。
もしかしたら、来年や再来年には、横浜で医カフェができているかもしれないですね。
まとめ
今回、医学生がこのような取り組みを自発的に行っているのが画期的だと感じました。コミュニティの重要性、人のつながりの力を信じているのが素晴らしいですね。
離島医療では同じく医療系の学生達が横断的に力を合わせて、離島医療に役立つことをしようと奮闘しているケースもあります。
このように学生からこのようなプロジェクトがどんどん出てくるような環境になればいいなと思いますし、我々もバックアップしていく必要があると感じました。
白戸さん、長時間のインタビューありがとうございました。この場をお借りして厚く御礼申し上げます。
<関連サイト>
「医Café SUP?」
https://www.facebook.com/icafe.sup.hirosaki/
オランド一日店長~医Café SUP?~
https://note.com/ncl_hirosaki/n/n382fcfedf0be