先日、このドクターズネットの取材をさせて頂いたブルーリンクプロジェクトの福士さんのフェイスブックを拝見していたら、藍の花の酵母でパンを焼くというコメントがあり、なんと斬新なと思って連絡をしたところ、「これはむつで蓮(ハチス)パン工房を営まれている中川さんの試みなんですよ」と教えてくれました。
「興味があるなら、おつなぎしますよ」と親切につないで頂き、取材をさせて頂くことになりました。
むつの友人に聞くと、「中川さんのパン工房で作られるパンは大人気でなかなか買えないのです」と教えてくれました。
そんな中川礼子さんへのインタビュー、ぜひご覧ください!
目次
- 本州最北端のパン屋さんをやることになったきっかけを教えてください。
- 自然酵母を活用したパンを作られていますが、何か理由があるのでしょうか?
- 酵母は様々なものを研究されているようですが、今、興味のあるものがあれば教えてください。
- マーガリンやショートニングを使わない方針と聞きました。その理由を教えていただけますか?
- 店名の由来を教えてください。
- 場所が極寒の下北半島ですが、パン作りにはあまり影響ないのでしょうか?
- 様々な種類のパンを焼かれていますが、何人ぐらいでこれを成し遂げておられるのでしょうか?
- 青森フルールに任命されていますが、活動内容を教えていただけますか?
- 毎日お仕事をしていくのは健康管理が大事だと思うのですが、何か工夫されていることはございますか?
- 最後に何か伝えたいことがあれば教えてください。
本州最北端のパン屋さんをやることになったきっかけを教えてください。
昔から、パンを作ることは好きでした。でも、主婦をやっていてパン屋を開こうということは考えていなかったのですが、夫の駐在でイギリスに3年住んでいたことがあり、その時にベーグルに出会い、ハマってしまいました。そして、将来、ベーグルを使ったパン屋さんができたら良いなと妄想をしていました。
結局、その後に夫が病気で倒れ、5年間介護をして亡くなった後、子供達も大きくなって就職した頃に陸奥へ戻ってきました。
18歳の時に短大へ行くためにむつを出て以来、住んでいなかったのですが、母が一人ここに残っていることもあり、帰ってみようかなという気持ちになったのです。
最初は、母の世話をする予定でしたが、思ったよりも元気で介護も必要なかったので、「そういえば、パン屋さんがやりたかったな」と思い出し、陸奥でできないかなと思ったことがきっかけです。
自然酵母を活用したパンを作られていますが、何か理由があるのでしょうか?
最初は、自家製の天然酵母にそれほどこだわっていませんでした。既に、良いものがあるので、そういうものを使っていたのです。
ところが、青森には関乃井酒造という酒蔵があるのですが、どうしてもそこの酒粕天然酵母を使って、あんぱんを作りたいと思っていました。やはり、あんぱんは酒粕酵母でないと、と感じていまして。
その関乃井酒造さんの紹介で八戸高専椿山酵母を使ってから、自家製天然酵母のパンを増やしました
最初はすごくうまくいき、美味しくて感動しました。でも、使っているうちに難しさもあり、試行錯誤したのですが、そのときに「天然酵母を自分で作るのは楽しい」と感じるようになったのがきっかけです。
天然酵母は、果物や花などからも取れるので、増やしてみようかなと思ったのです。
酵母は様々なものを研究されているようですが、今、興味のあるものがあれば教えてください。
夏秋いちごやアピオスの花、藍の花もそうですし、ブルーベリーの酵母のパンも出しています。天然酵母はものすごく時間がかかりますが、それぞれ風味が違います。特に、花は生命の源であり元気な酵母なので、藍もそうに違いないと思って実現させました。
実は今、体に良いのではないかと思って、藍の花の酵母を飲んでいます。まだ一週間くらいしか経っていないので効果はわかりませんが、いずれ、酵母ジュースもできたら良いと思っています。本当に甘くて美味しいんです。いちごの酵母もスパークリングのようで美味しいのですが、藍の花は上品な日本酒の味に近いですね。
マーガリンやショートニングを使わない方針と聞きました。その理由を教えていただけますか?
主人を大動脈解離で亡くしています。東京なので手術をして助かりましたが、当初は血栓が脳に飛び、意識は戻らないと言われました。その後、医療の力を借りて、杖で歩けるくらいにまで回復し、5年くらい生きました。
そのときに、体は食べるものによるんだと、ひしひしと感じました。主人が、若くして亡くなっているので尚更です。証券会社に勤めていて不規則な生活だったので、ストレスや睡眠、食べるものが影響していたのでしょうね。それまでは、単純に「主人が退職したら旅行にも行けるかな」くらいしか考えていなくて、まさか倒れてなくなるとは思っても見ませんでした。
もちろん、添加物を全て排除することはできませんが、私が作る生地にはトランス脂肪酸などが入ったものにはしたくないと思ったので、こだわっています。
店名の由来を教えてください。
「蓮」が好きだったので、蓮ありきでした。蓮工房など考えていましたが、語呂が良くないなと感じていたところに、「はちす」という呼び方があるとわかって、じゃあ「蓮パン工房」にしようと決めました。「はち」は末広がりで良い感じですし、お店を開くにも景気が良いと思っています。
場所が極寒の下北半島ですが、パン作りにはあまり影響ないのでしょうか?
部屋の中は暖かいので、かえって、東京でパンを作る方が大変だと思います。発酵が進んでしまうので。ただ、青森は雪が多いので、雪かきには翻弄されていますね。18歳で陸奥を出ているので雪かきをしたことなく、除雪が通った後の硬い雪を片付けるなど、びっくりしていました。
様々な種類のパンを焼かれていますが、何人ぐらいでこれを成し遂げておられるのでしょうか?
全て、一人で作っています。夜中に起きて作っているので、週に2日しか開けていません。酵母を作り、夜中に起きてパンを作るのは、これが限界ですね。普段、休んでいると思われがちですが、天然酵母を作ったり、酵母を育てたりしています。天然酵母は発酵にすごく時間がかかります。一次発酵が4時間、二次発酵が4時間という感じです。
これ以上は、時間的にも無理だと思っています。お店を開けている木曜と土曜は睡眠時間が短く、4時間くらいです。夜の11時半に起きるので、みんなが寝る時間に起きる感じですね。
青森フルールに任命されていますが、活動内容を教えていただけますか?
最初は、Iターン、Uターン、Jターンを対象に、起業サポーターズという感じで始まりました。各地域から6人選ばれて、最初は東京に行って話をしていましたが、今はほとんどzoomですね。今年は、それぞれの地域にフルールのメンバーが行き、起業されている方を招いて、話を聞く会を開きました。実際にzoomで話をしたり、会に参加された方で、青森へ戻って開業されている方もいます。そういうのを聞くと嬉しいですね。フルールのメンバーで集まると、「私たちって結構成績良いよね」と話したりもしています。
青森フルール
https://www.aomori-life.jp/news/oshirase/uijuij.html
毎日お仕事をしていくのは健康管理が大事だと思うのですが、何か工夫されていることはございますか?
食べるものはしっかり食べて、夜、寝る前に筋トレをするなど運動しています。パン屋を始める前は走ったりしていました。東京にいるとたくさん歩きますが、ここでは全く歩かず車生活なので、今更ですが、歩くようにも意識しています。
青森だと、歩いている人を見ると不思議な感じですよね。特に、陸奥は全く歩いている人がいませんし、一人一台、車を持っていますよね。
最後に何か伝えたいことがあれば教えてください。
酵母を使った石鹸を出そうと思って、試作を作っているところです。陸奥で、夏秋いちごのサイダーを出しているA-berryさんといういちご農家さんがあります。そこの残渣と夏秋いちごの酵母、関乃井さんの酒粕酵母を使った石鹸を出そうかなと思っています。
そのうち、種類も増やそうと思っています。藍の花の酵母の石鹸もいずれ出したいですね。
私と、下北の女性4人を加えた5人でやろうかと、始めたばかりです。試作を使ってもらっていますが、評判が良いですね。もちろん、科学的根拠がないので石鹸効能は言えないのですが。
兵庫に丸菱石鹸というところがあり、そこに製造を依頼していて、1回目の試作が終わり、出来上がってきています。この後、改良してから、もう一度試作を作る予定です。
周知するために、クラウドファンディングもやりたいねと話しています。最初は、リンゴの皮の残渣がもったいないよねというところから始まり、酒粕も結局は捨てるところなので、それらを使って地元の石鹸ができたら良いですよね。
また、下北はブルーベリーやカシスもできるので、ベリー酵母のシャンプーもいずれできたら楽しいよねと、妄想が膨らんでいるところです。他にもワクワクすること見つけたいですし、パン屋がつくる酵母の石鹸をまずは出したいですね。
<まとめ>
お話を聞いていると柔軟な考えで様々なことに取り組まれていることに気づかされました。パンだけではなく、今はいちごの石鹸にも取り組まれているとのことで興味深いですね。
インタビューをしていると無性に中川さんのパンを食べたくなったので、むつの友人に買って送って~とお願いしているところです。
蓮パン工房
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