黒ニンニクを世に出した機能性食品研究の第一人者 佐々木甚一先生インタビュー

最終更新日:2020年7月10日
弘前大学
元教授
佐々木甚一
先生
所属
旧弘前大学 医学部 保健学科 教授
学位
医学博士(弘前大学)
農学修士

このたびは青森県特産物の中でもひときわ光を放つ健康食品「黒にんにく」を研究し、その論文が黒ニンニク大ブレークの元になった弘前大学 元教授の佐々木甚一先生にインタビューを行いました。

 

ぜひご覧ください。

先生は若い時、どんな学生時代を過ごされてきましたか?

私は結核をやり18歳から2年間、盛岡のサナトリウムに入りました。その時に診てもらった先生は、東北大の抗酸菌研究所から非常勤で来ていた岡先生だと思います。「岡片倉培地」を作った先生だと思います。

 

大学に入り2年次に再度一年休学しました。同級生はみな先に卒業で、体力に自信はなくそれで大学院にいき2年の生活で体力に自信がつきました。人生でつまずいた学生時代でした。

 

地場食材の機能性を研究するようになったきっかけについて

弘大医学部細菌学教室に籍を得て、嫌気性菌、抗酸菌、電子顕微鏡、をやっていましたが、教室の2代目の福士教授から、これからがんの研究をしたいのでNIHのRibiのところに行ってくれと言われ、そこで腫瘍研究の基礎を学びました。

 

治療剤開発の研究で、使用するのはLPSと抗酸菌のCord factorの併用です。

 

その流れで食材に関心を持ち、1990年少し前に、青森県産業技術センターの主任 松江一氏から電話をもらいイカ墨から新規物質を見つけたが抗腫瘍性をみてくれとのことでした。それがきっかけです。

 

松江先生のお父さんは獣医の先輩で特に松江先生とは親しかったです。松江先生は医学部の一生化学の助教授だったです。のちに青森県立大の教授になりました。

 

イカ墨の研究は当時大きなブームになりました。英国の「New Scientist」の取材を受け掲載になり、また国内では朝日新聞の知恵蔵(現代用語1996)に収録されました。海外からの問い合わせも多くあり、数年前のCitation indexは80をこえていました。

 

多くの食品にイカ墨を使用するものが多かったです。

 

今でも残っているのは、青森の大畑にイカ墨ラーメンが残っているかな、富良野ではイカ墨いりチーズとか。

 

それ以来、地元の食材を使用しています。

 

今まで研究されてきた機能性食品を教えてください。

主なものは下記の通りです。

 

1.イカ墨の抗がん活性 (1991, 2月号 )

2.ホタテ煮汁の抗がん活性

. シジミ成分の肝炎改善効果

4.シジミ焼成貝殻の肝機能改善効果(三九商事;特許)

5.マイタケ、ツキヨタケの抗がん活性

6.ニンニクに含まれる生物活性

7.スイートコーンの抗がん活性(キュ;特許)

8.熟成ニンニクの抗腫瘍活性

9.ヒバの油(ヒノキチオール)の抗菌活性

10. 食材の匂いにある抗菌活性

11. 林檎の絞り糟の抗がん活性、コレステロール除去作用

12. ザイレリア菌糸体、スギヒラタケの抗腫瘍活性

13. カキエキスの抗がん活性

14. アロマの利用

 

印象に残る機能性食品や成分はございますか?

いかすみ黒にんにく焼成シジミ貝殻粉末。いずれも企業化に結び着いたものです。

 

黒ニンニクに関わるようになったきっかけについて

以前、O157(毒性を持つ大腸菌)が未曽有の大流行しました。岡山から始まり、旭川で終焉したのが秋でした。縦断したのです。

 

その時ににんにくの殺菌効果の研究をやりました。いい結果でした。この論文も80件以上海外で論文に引用されています。

 

我々の仕事はどのように社会に研究が還元できたかが評価になります。それがないと国民の税金を無駄遣いしたことになります。これは大切なことです。

 

この仕事を天間林で講演したときの関係で、町屋さんと知己を得ました。2005年に町屋さんから電話が入り、会いたいとのことで研究室に来てくれました。

 

天間林はにんにくの産地です。

 

なぜ会いたいのか理由は言いませんでした。彼が持ってきたのは黒いもので「にんにく」だというのです。最初のわたしの質問は「どうやって黒く染めたのか知りたい」でした。それが最初の出会いです。

 

活性を知りたいとのことでした。

「化学分析はある程度した。しかしどんな作用があるのかわからない。それをやってくれないかとのことでした」。

 

12月頃だったと思います。私の定年は3月なので急いでやることにしました。

 

中国からの留学生がいたので手伝ってもらい、3月にいい結果が出たのです。それが地元紙トップ記事になり全国に流れたのです。

 

黒ニンニクがなぜこんなに着目されるようになったのでしょうか?

活性が多彩でしかも今までの野菜の概念を根底から変えたところです。海外でもスーパーフードと呼ばれています。

 

我々の仕事がそこに引用されていて、今海外でも大学が作り始めました。いいことです。研究は今一つ十分でないところがありますがこれからです。順調にいけば、「Current Strategies in Biotechnology and Bioresource Technology」の本の中に我々の研究の一部が入ります。海外も今コロナ禍ですが。

 

 

今後、気になる機能性食品や成分はございますか?

SACという成分が黒にんにくにありますがそれの作用を知りたいと思っています。バングラのダッカ大に教え子が教授していますが、別の大学の准教授にやってもらいたいと話していますがやるかどうか?目的はあります。一か月くらい行ってきたいとは思っていますが。

 

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青森の短命県についてのご意見があればぜひ

これは中路先生の分野ですが、短命県は残念です。

 

三重の黒にんにくを作っている社長が、「黒にんにくを作っている青森がなぜ短命県なんですか?」と聞かれました。その時には「青森県人は黒にんにくをまだ知っていないんです。」と答えました。

 

やることは多くあります。短命県として、積極的に食を変えていく方法と、保守的にあれとこれを食べないようにとの方法があると思います。積極的にこれとこれは摂取するようにとの方法が必要と思います。

最後に視聴者に向けて一言頂けると幸いです。 

食材を使用し、それを食し、自分の体は自分で守るのが基本です。

薬はもともと食材から出発しています。

そのことをぜひ意識しておいてください。

 

 

まとめ

ニンニクの生産者と黒ニンニクを生みだした人、そして、大学の研究が相まって、このようなムーブメントにつながったいい事例だと思います。

 

実はこの間を取り持ち、スムーズに黒ニンニクが全国に広まる仕掛け人がおられます。

 

それは我々、青森ドクターズネットを運営する会社「ミライテコ」の設立にも尽力して頂いた青森県中小企業団体中央会の古川博志氏です。古川さんにもすでにインタビューの快諾を頂いており、近いうちに黒ニンニクも含め、お話を伺う予定にしております。(お楽しみに~)

 

佐々木先生のお話を伺っていると、わくわくしてきますね。

青森にはまだまだ様々な可能性を秘めた食材がありそうですし、黒ニンニクについても追加で面白いものが見つかりそうな感じがします。

 

佐々木先生、ありがとうございました。

この場をお借りして厚く御礼申し上げます。

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