青森に産前・産後ケア施設を作って、ママと赤ちゃんをサポートしたい! ~花田優加氏編~

最終更新日:2023年3月14日
青森市 新生児訪問指導員
花田優加
〜 保有資格 〜
・助産師 . 看護師
・受胎調節実地指導員
・新生児蘇生法「専門コース」認定
・マタニティヨガインストラクター
・ベビーヨガインストラクター
・ベビーマッサージインストラクター
・アロマテラピー検定1級

今回は前回に続き、「産後サポート施設を作りたい!」という熱い思いを持って活動されている助産師の花田優加氏にインタビューをさせて頂きました。

 

青森市においてすでに産前・産後サポート活動をされており、多忙な日々を過ごされているとのこと。リアルなお話や今後の展開について語って頂きました。

 

それではご覧ください!

助産師さんになろうと思ったきっかけについて教えてください。

昔から小さい子が好きで保育士になりたかったのですが、保育士となると少子化のこともありますし、都会に比べて青森は子供が少ない地域なので、仕事の選択肢として職場も少ないなど制限があるということが引っかかっていました。

 

看護の道で小児科の勤務でも良いかなと思い、看護の道に進みました。

 

ただ、いざ看護師になると新卒の時は自分で診療科を選べないので、小児科の志望であっても成人や老年などある程度、幅広い年齢層の病棟を転々としなくてはならず、何か違うなというのがありました。助産師になると、産科病棟に配属されるので、赤ちゃんを相手に仕事ができると思い、助産師を目指そうと思いました。

ご出身は青森市でしょうか?

そうですね。高校までここにいて、卒業後は横浜の看護学校や渋谷区の助産師学校へ行きました。そして、結婚を機に、また青森市に戻ってきました。

 

青森で助産師になる場合、今でこそ中央学院大学の助産専攻も増えましたが、私の時は選択肢が限られていました。ただ、一度、県外に出たい気持ちもあったので、私の中では東京か横浜の二択でしたね。

 

助産師になってみての理想と現実はいかがでしょうか。

助産師という職種はあまり周知されていないと感じています。出産を経験された方や周りにお子さんがいる方は、おそらく助産師はお産を取り上げるイメージで尚且つ、病院に勤務しているという印象のようです。出産経験のない方や周りにお子さんがいらっしゃならい方にとっては接する機会がないので、「助産師さんは何をするんですか」「看護師さんと何が違うんですか」とよく言われますね。

 

ましてや、病院を辞めて、今フリーランスで助産師をしているとなると、「お産しないで何をしているのですか」という感じなので、助産師の存在が周知されていないと感じました。

 

病院の中にいると、助産師さんは「赤ちゃん取り上げてくれてありがとうございます」といった感じで、産科にいるスタッフ=助産師という括りなります。病院を出ると助産師さんと言われることはなく、看護師さんや保健師さんと呼ばれますね。

 

助産師は、単にお産を取り上げるだけでなく、妊娠・出産・産後の女性や赤ちゃんに対しての教育や指導を行う専門職です。また、生と性の教育や、思春期・更年期症状などの保健指導も行います。要するに、女性の一生にわたって携わるような幅広い仕事をしているのですが、漠然としていて受け入れてもらいにくいのかもしれません。

 

それに、病院で実際はお産に立ち会っていても、「先生ありがとうございます」と言われることが多く、メインはお医者さんであり、助産師は外回り的な存在です。

 

本当は、お産になるまで関わりますし、お産の時も取り上げます。また、退院するまでのケアも助産師のはずなのに、退院する時に「先生ありがとうございます」と言われると、助産師って何なんだろうと感じたこともあります。

 

もちろん病院なので、何かあった時はお医者さんが対応しますが、ずっと側にいるにも関わらず、あまり力に慣れていない、自分の存在って必要なのかといった気持ちになりました。

加えて、お産の現場はみんなが幸せとは限りません。妊娠に至るまでも人それぞれですし、無事に生まれるかもわかりません。生まれても病気があったり、母子分離を強いられたり、いろんなケースがあります。だんだんと病院で働くうちに、思い描いていたような助産師像とかけ離れ、やりがいを感じられなくなっていきました。

 

最初に勤務した病院の配属が、産後専門の病棟でした。産前病棟や分娩室でも勤務しましたが、どちらかというと、退院後の生活指導や沐浴など育児のケアを重点的に行う産後病棟の方が仕事のやりがいを感じました。

 

退院していった後、ママや赤ちゃんはお家でどうしているのかなど、産後の生活に興味が出てきましたし、そのような仕事ができればと思うようになっていました。

 

結婚して青森に帰ってくるのを機に育児に専念することになり、しばらく仕事から離れました。そして、子育てが落ち着いたので、もう一度、クリニックに勤めました。お産をとり上げながら、入院中のママたちにお話を聞いたり、アドバイスしていると、やはり自分は産後の子育て期に関わる仕事をしている時の方が楽しいと思ったので、クリニックを辞めて青森市の委託である新生児訪問指導員を始めました。

 

退院直後から1ヶ月健診まで間の赤ちゃんがいるお家に行き、赤ちゃんやママの体調も確認しつつ、産後うつなど精神的なところでもお話を聞くことができるので、すごくやりがいを感じるようになりました。

 

今は、新生児訪問指導員をしながら、新生児訪問以降に助けを必要とするママの力になりたいと思って助産院を開業し、昨年始まった青森市の産後ケア事業も兼務して活動しています。

 

助産師から見た、青森の妊産婦の助産師の問題点や地域特性などはいかがでしょうか。

身体的なところで言うと、車社会なので肥満の方が多いように思います。都会は電車があって歩く機会があります。こちらへ帰ってくると妊婦だけに限ったことではないのですが、身体大きい人が目につきます。

 

車に乗ると運動量が下がりますし、寒いから家に籠りますよね。青森は食べ物が美味しいし味付けも濃く、血圧が高くなったり、生活習慣病を合併している妊婦は多いと思います。結果お産のリスクも高くなりますし、そういった地域特性はあると思います。

 

出産直後は体力回復のためにも、ママには極力無理をせず、ゆっくり過ごしてもらいたいのですが、頻回授乳や慣れない育児で睡眠不足になって休息もままならず、精神的にも参って負のスパイラルに陥ってしまいます。

 

また、地域特性といえば、おじいちゃんやおばあちゃんと同居している場合が少なくありません。サポート面では恵まれていますが、おじいちゃんおばあちゃんの子育て論を若いママに押し付けるということも多いですね。

 

各家族で事情が異なるのですが、人手が足りなくて困っているお家もあれば、人手はあるけど精神的なプレッシャーがあり「昔はこうだった」「お腹空いていて、ミルク足りないんじゃないの」と、悪気はないけれど、ママからしたら攻めたれてられている感じがするお家もあるのかなと感じます。

 

なので、病院勤務だけではなく地域に出みると、退院後の話をただ聞くだけの助産師がいても良いのではないかと日々感じています。産んで終わりではなく、産んでからがスタートです。

 

妊娠中は妊婦健診があるので、何か不安になったり困った時は病院に聞くことができますが、退院するとちょっとした疑問を相談したり、話を聞いてくれる場所ってなかなかないんです。よっぽど赤ちゃんが具合悪い時に小児科に行くくらいしか相談する場所がありません。

 

例えば、赤ちゃんの体重がなかなか増えない場合、ミルク足せば良いというようなことがあります。小児科の先生は、赤ちゃんの体重で判断するので、赤ちゃんが順調に成長していればそれで良いのですが、ではおっぱいが出ているのに上手く飲ませられない、詰まりやすくて乳腺炎を繰り返すようなママにとっては、ミルク足したら母乳はどうするのという気持ちもありますよね。そのようなところで、退院してからのお手伝いやアドバイスをしてあげたり、我慢していた気持ちを聞いてあげるような地域助産師は、もっとたくさんいた方が良いと思っています。

 

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病院とクリニックで働き方の違いはありましたか。

かつては、周産期センターにいました。そこは、産前病棟、分娩室、産後病棟、NICUなど全てが分かれて周産期センターになっていたので、助産師も300人近くいました。

 

勤務を回しているのが全て助産師なので、ママや家族からすると安心感はありますが、働く側からすると、すごくプレッシャーでしたね。よく言えば、みんなが助産師なので誰かができなくてもフォローしてくれるのですが、できて当たり前という風潮でした。

 

ハイスペックな助産師ばかりで、大使館も近かったので多言語を使いこなす先輩もいましたし、海外を経験していて色々な知識や技術を持っている同僚もいました。

 

頼もしい反面、プレッシャーが大きかったです。私一人いなくても良いよね、という気持ちにもなりました。病院自体は大きいので、ハイリスクの妊婦さんや赤ちゃんが来ます。常に勉強や研修があるので、成長しましたし、多様な事例を見ることができたので、私の今の財産になっています。

 

クリニックだと、極端に助産師が少ないですよね。青森市は産科のクリニックは3つあります。当時、私がいたクリニックの助産師は3人で、他は看護師でした。

 

クリニックにいた頃は、医師も助産師も少ないので自分でやらなくてはいけない範囲が大きかったですよね。

 

大きい病院であれば、赤ちゃんの緊急時であっても医師や助産師が対応できますが、クリニックは自分しかいない時もあります。クリニックで初めて経験したことや初めて覚えた技術がたくさんありましたし、クリニックに育てられた部分もあります。自分でやらなければならないことが増えたので、仕事の幅はある意味、広がりましたね。

 

今、私の周りに同じような働き方をしている人はまずいないですね。私にとっては、今の仕事のやり方だと新生児訪問でゆっくり話せますし、相談があってまかないきれないところは助産院という看板を掲げているので、そちらで対応もできます。

 

ただし、1人なので限界があります。せっかく連絡をもらっても、スケジュールがいっぱいだと病院受診を勧めることもありますし、本当は頼ってくれたママすべてに対応したいのですが。

助産院を作ったのはいつ頃でしょうか。

去年の3月です。実際、助産院としての仕事は少なく、市の委託の新生児訪問がメインです。合間に産後ケア事業や助産院の仕事を入れているので、1日の仕事の時間が足りないですね。新生児訪問や産後ケアをする助産師は市内にも45人いますが、その人数で青森市を分担している状況です。

助産院にスタッフが何人いると、うまくまわせるのでしょうか。

産後ケアの宿泊を伴う施設となると、看護師や助産師の24時間体制になります。1日2交代になるので、休みも含めて4人くらいは欲しいところですね。規模にもよりますが。

 

ベッドを45台入れて、日中は育児サロンなども併設するとなると、もっと施設として大きくなければならないので、もっと必要になります。

 

宿泊を伴わない場合は、アパートの空き部屋を借りて運営することもできますが、赤ちゃんが活動するのは夜なんです。退院してしばらくは、赤ちゃんは日中が静かで夜寝ないことが多いです。なので、日中に来てもらっても良いのですが、どちらかというと元気になる夜にお手伝いして欲しいというママの気持ちがありますよね。夜寝られないと精神的に追い詰められるので、そうなると宿泊型がいいのかなって思います。

 

青森市の産後ケア事業では、デイサービス型と訪問型があり、ママが自宅かホテルの一室かを選択し、希望のケア受けることができます。日中、3~4時間という制限もありますが、助産師がマンツーで指導やアドバイスできますし、仮眠をとったりゆっくりお風呂に入ったりと、自分の時間に使うこともできます。

 

青森市の出生率は年々下がっていますし、産後ケア施設は絶対に必要だとは思うのですが、個人で始めるにはコストがかかります。安定して利用者が来る確約があれば良いのですが、来るか来ないかわからない状況の中で24時間体制にすることは難しく、携わっている新生児訪問もできなくなるので悩みどころです。

 

また、都会で始めるのと青森で始めるのとでは、金銭的な感覚が違います。青森市の産後ケア事業は、ママたちの自己負担は数千円程度ですが、「お金がかかるんですか」と言われることも多いですよね。

 

通常産後ケアは数万円かかるところ、乳房ケアも受けられる青森市の産後ケア事業は破格なんです。それでも、全国でも最低賃金の青森県民にとって、お金がかかるということはシビアなことで、産後ケアとなるとお金を払ってもらえるのかどうか不安で揺れ動いているところです。ママは受けたくても、おじいちゃんおばあちゃんが「そんなものにお金を払うの」となるとますます難しいですよね。

 

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今後の理想について教えてください。

子育てもしながら仕事もしたいという欲張りな働き方を選んだので、同じように子育て世代のママさん助産師や病院でのフルタイム勤務が難しい助産師さんが、一時でも産後の地域助産師として活動してくれたら嬉しいですね。

 

そして、ある程度子育てが落ち着いた段階で病院勤務に戻る働きが一般的になってくれれば、あちこちにかかりつけ助産師がいる地域となり、何かあったときに頼れるようなママさんも増えると思います。

 

また、子育てをしている助産師ママも、日中、子供が保育園へ行っている時に勤務ができますし、尚且つ、助産師の仕事もできてWin-Winの関係になれるのではないでしょうか。やはり、地域助産師として働いてくれるママさん助産師が増えてほしいですね。

 

そのほか、産後ケアとしてママたちが集えるような施設が作れたら良いと思っています。大きくなくて良いのですが、お家のようなアットホームな助産院で、疲れたら休み、寂しくなったらお茶を飲んでいくカフェ兼助産院のような場所を作り、子育てを楽しんでやってもらえる場所を作りたいですね。その場に私も携われたら良いと考えています。

最後に伝えておきたいこと

助産師をもっと知ってほしいと思います。そして、もっと頼ってほしいですね。また、私のような人が増えてくれるのが一番ですし、何かに困っている時に限らず、久しぶりに電話してみた、寒くて遊びに行くところないから来てみたなど、ママ友の延長で良いので、フランクな付き合いができる地域の助産師が増えて、お産=助産師ではなく、地域で子育てする家族に寄り添う存在になれれば良いと思います。

まとめ

花田さんのお話を伺っていると色々な地方における産科医療やそのサポートについての課題が分かってきますよね。

 

こういう一つ一つの課題を解決していくことは一朝一夕で出来る事ではないので、そのままスルーされて、その場を我慢すればいいと流されてしまうケースがほとんどです。

 

でも、それは変えなければならないと明確化していくことが第一歩であり、その声をあげた今回のお2人のチャレンジはみんなで応援すべき事だと感じました。

 

ご存知の通り、今、日本では急速に子供の数が減っています。子供が増えていく社会じゃないと衰退します。特に青森の高齢化は深刻です。

 

元気なママと子供が増えないと明るい未来はありません。その点はよく分かってはいるものの、実際に何をすればいいのかと手をこまねいている方も多いと思います。

 

でも、今回の試みはその手を差し伸べる一つになると思っております。みんなで温かく見守っていきたいですね。

 

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