冨澤登志子教授(弘前大学医学部大学院保健学研究科)インタビュー 産学連携で今までにない医療機関向け夜間巡視ライト開発を実現!

最終更新日:2021年5月18日
弘前大学大学院保健学研究科
教授
冨澤登志子
先生

このたびは先日、青森県庁で記者会見をされ、メディアに大きく取り上げられた新製品(夜間巡視ライト)を開発された冨澤登志子先生にインタビューをさせて頂きました。

 

どのような経緯でこの製品が開発され、市場に出たのかの背景やその思いをお話頂きました。

 

ぜひ、ご覧ください!

 

学部のご紹介をお願いいたします。

私が所属をしているのは、弘前大学大学院保健学研究科です。

ここは、看護学、放射線科学、検査技師科学、理学療法学、作業療法学の5つの専攻に加えて、昨年度からは心理支援科学という公認心理師の養成課程が加わり、大きくは6つの専門職を育成する学部になっています。

 

もともとは、医療技術短期大学部があったのですが、教育学部にも看護教育学科がありましたので、それらが一緒になって大学の方に統合されました。統合されてから、今年で21年目になります。

 

先生は、糖尿病の研究をされていらっしゃるのでしょうか。 

はい。それだけではなく色々と幅広いことをしています。もともとは糖尿病の研究をしていましたが、今は大学で被ばく医療に関する教育研究にも携わっています。弘前大学は、放射線災害に対応できるように地域の安全暗視のための人材育成や研究を積極的に行ってきました。その事業には10年以上関わっています。しかし今回のライトの製品化に関しては、全く今まで私が携わってこなかった領域の話になります。

 

先生ご自身は、最初から大学の先生になろうと思われていたのでしょうか。 

大学は教育学部の教員養成課程を修了したため、教育には大変興味がありました。高校の看護科の免許を取得し教員を目指す課程でしたが、大学の教員になることを期待していました。

 

学校自体が少ないので難しいと感じていましたが、ある時病院で看護師として働いているときにお声がけいただいたことがきっかけで今の大学へ入ることになりました。

 

大学はどのような雰囲気なのでしょうか。

看護科があるのでどうしても女性教員が多いです。他と比べて圧倒的に女性が多く、若い先生もたくさんいらっしゃるのが特徴です。

 

私が今、所属しているところは女性にとって、大変働きやすいところです。男性女性問わず、成績を上げていけばいろんなことができますし、実績をあげていけば責任も増えますが立場もしっかりとアップしていきます。

しかし、そうともいえない部分も根強くあり、女性が発言しにくい、出ていきにくい部分はないわけではありません。

 

夜間巡視ライト「AO.Light」(ア.オ.ライト)を作るきっかけになった出来事はありますか。

私は、弘大附属病院で看護師の方向けに研究指導をしばらく行なっていたのですが、その中で、看護師の方から「夜勤の時に術後の患者さんの創部をライトで観察しようと思っても、今使っているものではよく血色が見えない」という話がありました。それ自体は、研究の核となる話ではなかったのですが、そのときのエピソードこが少し引っかかっていました。私自身、病院の方に勤めていた時、LEDライトは使っていなかったので、それは一体、どういう感じなのだろうとモヤモヤしていました。

 

他の教員の方や看護師の方に聞いてみると、「ライトが白く反射して、確かに眩しい」という話が聞こえてきたのです。ちょうどその時、別で共同研究していた企業の方を思い出しそういうことに詳しいのではないかと思い聞いてみたところ、専門だということがわかりました。

 

そこで、「患者さんにも眩しくなく、軽量で白く反射しないライトは巷にないと思うが作れますか」と話をしたら、作れなくはないというお返事でしたので、それではやってみようと取り掛かることになりました。

 

製品化するにあたってのモチベーションを教えてください。

モチベーションは2つありました。

 

一つは、私の性分として、目の前にある問題をなんとか解決できないかと考えて働くタイプだということがあります。

 

もう一つは、医療現場に還元でき、現場に役立つものを研究者として携わりたいという思いです。社会への還元という意味では、研究というのはすごく重要だと以前から思っていました。今ある知見で解決できるかどうかとにかく動いてみる。そして動いて見てそこから探っていけば、何か解決策があるのではないかと考えていました。

 

一緒に組まれた株式会社光城精工は、いかがでしたか。

株式会社光城精工さんも、現場のニーズに応えたいという気持ちもあったと思いますが、すぐに実現しなくても良い、とにかくやってみましょうという感じで進めていたと思います。現場でも欲しいと言っていますし、企業側も作れなくはない。やってみる価値はあるということですね。

 

そして、もう一つとして、いくつか調査した中では、製品としてちょうど良いものがなかったということがあります。やはり、求めている者は現状、巷にはないという確信に変わり、これだったらいけるかもしれないと意見が一致しました。

 

作るまでにどのくらいの年月とコストがかかったのでしょうか。

2年間ですね。試作段階を繰り返し製品化までの道筋が見えてきたところで資金が足りずに・・・・

 

クラウドファンディングでは、116万円の支援をいただきました。そのほか、株式会社光城精工さんの会社の話を聞くと、金型などに300万くらいかかったようです。費用の一部を青森銀行も支援してくださり、結果的に400万ほどかかりました。

 

コストの回収までは非常に長い道のりだとは伺っておりますが、看護職だけではなく、介護も含めてかなりたくさんの方が夜勤をされますので、色々な現場で使っていただけるのではないかと思っています。

 

クラウドファンディングは、先生が思いつかれたのでしょうか。 

研究支援をしてくださるリサーチアドミニストレータが大学にはいますが、その方に資金をどう集めたらいいのだろうと相談したところ、「昨今、クラウドファンディングをしているところもありますよ」と教えてくださいました。研究ではそれほど事例はなかったのですが、非常に高額なものから学生の研究まで色々あり、何か新たな物を作るというのはそれほどなかったので使ってみることにしました。

 

クラウドファンディングにて、予定している金額を越えることができたのは

随分、声かけをさせていただきました。広報もしました。

 

半分は、青森県内の方の支援ですし、半分は県外からになります。

私自身の知り合いの方も支援してくださりましたし、もしかすると、クラウドファンディング自体、集める個人の関係者が多分に含まれているのではないかと思います。

 

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商品化に向け、苦労されたことがあれば教えてください。 

80人ほどの看護師の方に、毎回、試しで使ってもらっていました。夜勤で、一般のLEDライトとの比較をしてもらうなどしていましたね。

この部分はこうあって欲しい、という意見を毎回伺うのですが、多くの看護師の皆様の最大公約数を見つけることが難しかったです。

 

ある人にとってみれば、ライトの調節の仕方などが簡単であっても、他の人にとってみれば使いにくいなど。それら全てのニーズを形に落とし込むことが大変で、株式会社光城精工さんは本当に苦労されたと思います。

毎回、「こことここをなんとかしてください」と、注文をたくさん持っていくのですが、優先順位を聞かれましたね。

結果的に、どれも甲乙つけがたく、費用面や最終的に製品化した時のコストを合わせて調整していきました。

 

本当に、何度も微調整を繰り返しました。

年齢によっても使い勝手が異なるのですが、年齢が高いナースの方が「すごく観察しやすい」と言ってくださりました。統計をかけましたが、なぜベテランの方の方がそうおっしゃったのか原因に関する詳しい分析はできていませんが、ある程度加齢による変化もありますし、それもまた検証していきたいと思っています。

 

関わった方々も、製品化を喜んでいたのではないでしょうか。

皆さんに喜んでいただきました。新人さんの入職祝いにも使えそうだという声もいただきましたね。

 

将来的には、感染面も考えて、一人ひとつライトを持って巡回するのが良いと思っています。ライトに個人名をプリントするなどして、個人持ちにしても良いですよね。今だと、皆さんが同じ大きいライトを共有していますので。

 

また、このライトは充電式なので、費用的にもすごく得だと思います。その都度、単三電池などを購入しているとコストがかかりますが、このライトであれば1回の充電で10時間使えますし、電気代も30円ほどです。長い目でみると、病院としても費用削減になるのではないでしょうか。

 

メディアの反応はいかがでしょうか。 

メディアの方は、「現場に、こういったライトはないのですか」とまず、驚かれましたね。夜間、定期的に巡回をしていることも知らないメディアの方もたくさんいましたので、実際に製品を手に取り、暗い中で試してしていただくなどしていただきました。磁石にもくっつきますし、おもちゃのように実際に触って手に取ることで、皆さん興味を示してくださいましたね。

 

今後、この製品の認知度を上げるためにどのような活動をされるのでしょうか。

この製品は、看護の皆さんの声からできたという経緯もありますので、まずは、看護協会へお知らせしていこうと思います。また、株式会社光城精工さんは別のメディアの取材を受け、卸の方へのアプローチをすると伺っています。

あとは雑誌など、そういうところにも情報提供していこうと思っています。

 

サイトを見ている方々へのメッセージをお願いします。

今回作ったライトは、現場の皆さんの声からできたものではあるのですが、今は地方から全国、世界に発信できるようになりました。インターネット環境も良くなりましたので、青森から新しいものを情報発信していくことの一つの良い事例になればと思っています。

 

青森出身の若い人たちは、どうしても東京など都会に思いをはせ、地元になかなか残ってくれないということがあります。しかし、地元に残っていても、若い人たちが活躍できるところはありますし、色々なことに関わりながら、自分たちでアイディアを出していくことで若い人でも発信できるという想いが込められています。若い人たちの励みになればいいですね。

 

実は今、AIとか産学連携など、別のプロジェクトが走っておりますので、引き続き何か新しいものを作っていきたいと考えています。

 

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まとめ

通常、現場で困っていても、このような新製品に結び付けられるケースは非常に少ないと思います。しかし、冨澤先生のチームではそれを積極的に推し進めるプロジェクトチームを作り、形にされています。

 

また、企業との連携もスムーズに産学連携の良いモデルケースだと感じました。

今も新しいプロジェクトが走っているとのこと、色々と愛ある新製品や新サービスが出てくるのが楽しみですね。

 

我々も先生の活動を常に追って、記事にして、皆さんと共有していきたいと考えております。

 

冨澤先生、お忙しい中、インタビューを受けて頂き、ありがとうございました。

この場をお借りして厚く御礼申し上げます。

 

関連サイト

研究室WEBサイト

https://www.hs.hirosaki-u.ac.jp/web/daigakuin/teacher_detail01.html?id=38

 

AOライトプレスリリース

https://www.hirosaki-u.ac.jp/55257.html

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